『G線上のあなたと私』しがらみに囚われていた桜井ユキ 人はいつから“大人“になるのか
「意味がない」と言われる時間、「くだらない」と言われるやりとり……そんな人生の“ムダ“とも思えるもので繋がった「名前のない」関係性だからこそ、也映子、理人、幸恵は素直になれた。同じ場所にいても、「先生」であり「兄の元婚約者」というしがらみが最初にあった眞於には、その関係性が羨ましかったことだろう。
「ぜんぶ人間愛だよ。恋とか愛とかばっかりじゃないよ。わたしたちの間にあるものは。わたしたちって、この3人だけじゃない。眞於先生も含めてだよ」。だが也映子は、苦しむ眞於のことを「ほっておけない」と、理人を向かわせる。それが、どれほど自分の心をえぐることかも自覚する間もなく。溺れている人を目の前に必死に助けを呼ぶ人のように。
大人になるとは、誰かを注意深く見てあげること。そして自分のできる限りを尽くして、相手をいたわり、守ること。そのために、自分が多少傷ついたり、苦しい思いをしたとしても、それを受け入れる器があるということのように思えてくる。子どものように「見ていて」「ほっとかないで」と言われたときには手をつなぎ、抱きしめる。そしてときには、相手の言動を信じて手を離し、適切な距離から見守ることも。
もしかしたら、子どもに戻れる安心感があるから、大人になれるのかもしれない。也映子の涙を受け止める幸恵の温かさ。理人なら帰ってきてくれると信じる気持ち。也映子を大人にしているのは、そんな居心地のいい場所にほかならない。
(文=佐藤結衣)
■放送情報
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:波瑠、中川大志、松下由樹、桜井ユキ、鈴木伸之、滝沢カレンほか
原作:いくえみ綾『G線上のあなたと私』コミックス全4巻(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本:安達奈緒子
演出:金子文紀、竹村謙太郎、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gsenjou/