のむコレの季節がやってきた! “ヤンキー更生映画“『英雄都市』『スーパーティーチャー』を要チェック

「のむコレ」“ヤンキー更生映画”を見逃すな

 今年も映画館・シネマート新宿/心斎橋で実施されるのむコレの時期がやってきた。同劇場の編成担当である野村武寛氏がチョイスした世界各国の話題作・注目作が上映されるわけだが、今回はラインナップ内で非常に珍しい事態が起きている。限られた映画の中に、奇しくもヤンキー更生映画2本も含まれているのだ。

韓国映画の総合力の高さを感じ取れる『英雄都市』

 まず1本目は韓国映画『英雄都市』(2019年)。ヤクザのセチュル(キム・レウォン)は、立ち退き交渉の場で出会った女弁護士のソヒョン(ウォン・ジナ)に一目惚れ。ソヒョンのために即ヤクザを廃業して「いい人になる!」とシンプルに更生宣言。しかし、その街では敵対ヤクザとド外道市長の癒着が行われていた。セチュルとソヒョンはとある事情から市長選に巻き込まれ、色々あった末にセチュル自身が市長選に立候補することに……

 ピュアすぎるヤクザと熱血女弁護士のラブストーリーをメインプロットに、韓国映画名物の腐敗しきった権力者、毎度おなじみの刺し身包丁を振り回すヤクザ軍団、いい顔のオッサンたち、観客全員が「早くこいつをシメろ!」と言いたくなる悪役に、過去の因縁などなど、まさに韓流よくばりセット。恋愛・サスペンス・コメディ・アクション・社会派・親子ドラマを乗っけた盛り沢山な映画である。

 何より月9っぽいラブストーリーで始まった話が、刺して刺されてのヤクザの抗争を経由しつつ、ちゃんと月9っぽいラブストーリーとして爽やかに着地するのが凄い。近年の韓国映画はジャンル横断モノが多いが、これもその一種だろう。汚い手段を使う「悪」を、「正義」が真っ当な手段でやっつけるのも痛快。韓国映画の総合力の高さが感じ取れる1本だ。

進研ゼミよりドニー・イェン!『スーパーティーチャー 熱血格闘』

 そして2本目は宇宙最強こと中華圏を代表するアクションスター、ドニー・イェンの主演作『スーパーティーチャー 熱血格闘』(2018年)。生徒の成績&素行が悪すぎる高校に、元軍人の教師チャン・ハップ(ドニー・イェン)がやってくる。チャンは型破りな指導法で生徒たちの問題に向き合い……と、3040代の日本人的には反町隆史の某曲のイントロが流れてきそうなあらすじの1本だ。

 その予感は正しい。ドニー先生の初授業のあと、生徒たちがタバコを吸いながら「あの先生ウゼー」「どうせすぐいなくなるよ」と文句をいうところは懐かしさすら覚えた。ここからドニーさんから不良への鉄拳授業が始まるのかなと思いきや、ところがどっこい、本作は香港の教育事情、あるいはティーンエイジャーが直面する社会問題へ深く切り込んでいく。激しい受験戦争や偏差値至上主義への批判を主軸に、人種差別や男女間の格差、さらには学習障害を抱えた子や大人のアルコール依存症など、提示される問題は多岐に渡っている。生徒たちもゲーマーだったりミュージシャン志望だったりと、「不良」の一言ではくくれないメンバーばかり。

 正直2時間の映画ではなくて10話のドラマで見たいボリュームだが、そこは香港映画なので2時間以内に収めてくる。人生の赤ペン先生ことドニーさんは、こうした山盛りの問題を詠春拳のチェーンパンチのごとくスピーディーに解決してゆく。

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