“女性同士の奇妙な関係”を描いた新たな秀作! 『グレタ GRETA』に漂う“孤独”と“狂気”

『グレタ GRETA』が描く孤独と狂気

 穏やかな調子で始まる映画だが、ある印象的なシーンで一気に不穏な空気に包まれる。2人がディナーの準備をしているとき、フランシスはグレタの“秘密”を知ってしまう。グレタはフランシス側の人間でも、エリカ側の人間でもない。グレタは宇宙でたとえるなら『インデペンデンス・デイ』(1996年)に登場した、地球を焼け野原にしようと攻めて来た巨大UFOである。グレタの正体があらわになるや、演技派イザベル・ユペールの独壇場。彼女の凶行は、劇場で「目撃」する方がいいだろう。特に“クッキー作り”は必見。ショッキングだが、ブラックコメディのようにも見える。

 しかし、こうした狂気に陥りながら、グレタはフランシスの母であり、友達であり続けようとする。社会の常識も人の気持ちも無視して、孤独を埋める愛を求めるグレタを見ていると、恐怖を覚えるのと同時に、哀しみを覚える。そして人は孤独で狂気に走るのか? それとも狂気ゆえに孤独に陥るのか? ……とも、考えさせられる。グレタはまるで『バットマン』のジョーカーのようだ。もちろん凶悪性もジョーカー並で、イザベル・ユペールの演技も手伝って、私には一瞬、本当にジョーカーに見えた。

 本作は奇妙な映画である。大別すればサスペンス映画だが、サスペンスだけではない。切なく、怖く、笑えて、どこか哀しい1本である。そして、グレタという恐るべきキャラクターの出現に、まずは拍手を送りたい。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『グレタ GRETA』
TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 新宿ほかにて公開中
監督・脚本:ニール・ジョーダン
出演:イザベル・ユペール、クロエ・グレース・モレッツ、マイカ・モンロー、コルム・フィオール、スティーヴン・レイ
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
原題:Greta/2018年/アイルランド、アメリカ/英語/98分/カラー/シネスコ/5.1ch/字幕:川又勝利
(c)Widow Movie, LLC and Showbox 2018. All Rights Reserved.
公式サイト:greta.jp

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