新解釈のロビン・フッド映画 タロン・エジャトン主演『フッド:ザ・ビギニング』が掲示した可能性

『フッド:ザ・ビギニング』が掲示した可能性

 本作の極めつけは、イヴ・ヒューソン(『ブリッジ・オブ・スパイ』)演じる、本作のヒロインであるマリアンとともに、フッドが鉱山での火花散る馬車チェイスを展開する場面である。この、ほとんど現代のカーチェイスと見紛うアクションは、中世の世界観と我々観客の感覚を強引につなげ、楽しく混乱させられてしまう。これはかなりユニークな体験ではないだろうか。

 ロビンは、表向きは権力者たちに協力しながらも、裏では“フッド”として民衆のために戦う、大富豪ブルース・ウェインとバットマンの関係のような、二つの顔を持ったキャラクターだ。マリアンは、フッドとしてのロビンを、「それこそがあなたの本当の姿」だと語りかけ、それがロビンの進むべき道を決定的なものとする。このように、二つの自分をめぐる葛藤と選択こそが、本作の重要なテーマであろう。

 現代に生きる我々も、社会のなかで求められる役割をこなす自分と、心のなかに秘めている、それとは異なる考えを持った自分が存在し、互いに折り合いをつけながら生きているところがある。本作の権力者のように、世間から尊敬されるような立場でも、裏では暗い欲望を持っていたり、ロビンのように、本当はもっと善良に生きたいという願望を持ちながら、それと逆の立場に収まっている場合がある。

 意識的にしろ無意識的にしろ、我々はそのどちらがより本質的な自分なのか、最終的にどちらの声を聞くべきなのかという葛藤のなかにあるのではないだろうか。そして、どちらを選択するかによって、我々も世の中を変えていくヒーローになることができるのかもしれない。本作は、その可能性を提示しているように思えるのだ。

『フッド:ザ・ビギニング』予告編

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『フッド:ザ・ビギニング』
10月18日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
製作:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・デイヴィソン
監督:オットー・バサースト
出演:タロン・エジャトン、ジェイミー・フォックス、イヴ・ヒューソン、ベン・メンデルソーン、ジェイミー・ドーナン
配給:キノフィルムズ/木下グループ
2018年/アメリカ/英語/カラー/シネマスコープ/116分/日本語字幕:松崎広幸/原題:Robin Hood
(c)2018 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. 
公式サイト:Hood-Movie.JP
公式Twitter:@HoodMovieJP
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