『まだ結婚できない男』阿部寛演じる桑野が“まだ結婚できない”ワケ 面倒臭すぎる生態をシビアに分析

『まだ結婚できない男』桑野が結婚できないワケ

 また、独身生活が長いと他人の干渉がないために、自分の世界観やルーティーンができあがる。特に桑野は色んなものに興味がありこだわる性格から、そのペースを崩されるのを異常に嫌う。ただ、その桑野ワールドに共感し、自ら入って行くような人なら喜んで迎え入れるだろうが、未だ独身というのが結果を物語っている。

 そして、桑野が独身でい続ける最大の原因は、彼の周りには何だかんだ程良い距離感に話し相手をしてくれる人がいるということではないだろうか。桑野は実家暮らしではないが、常に母親や妹夫婦が桑野を見張るように周りにいるというのも実家暮らし状態と変わらず、桑野的には母親の面倒を見ていることになるのかもしれないが、独身でも寂しくないというのは、婚期が遅れる大きな要因だ。

 そんな中でも一番気心を知る良き理解者が、内科医・早坂夏美(夏川結衣)だった。彼女がいたからこそ、40過ぎの桑野は独身でも楽しくいられ、救いでもあった。前作『結婚できない男』では、あれだけ素敵な恋のキャッチボールをし、プロポーズが成功するのかと思いきや、桑野が最後に「理想の家のイメージができない限り結婚できない」という、建築家らしい変なこだわりで行く末が曖昧に。結末をハッキリと描かないからこそ、『結婚できない男』は粋な名作ドラマになっていた。

 13年ぶりの続編『まだ結婚できない男』で、桑野が早坂先生とは結婚していないという答えが出てしまい、本当に残念としか言いようがない気持ちでいっぱいだ。桑野のような性格は歳をとればとるほど頑固になるし、前作を観返すと、早坂先生はやはり良き理解者ではあるが、一生付き合える「友達以上恋人未満」の関係にも見えてくる。

 40代は結婚に対しても切迫感があったが、53歳となった桑野はもう人生100年の独身生活を送る腹を括ったようなスッキリとした雰囲気さえ漂わせ、元部下で今は共同経営者となった村上英治(塚本高史)に対しての嫌味にも、余裕がありどこか達観したようにも感じる。もちろん年齢的なものもあるが、あの早坂先生と結婚できなかったのだから、もう色々と諦めて感情をシャットダウンしたのではないだろうか……。ただ、弁護士の吉山まどか(吉田羊)が独身と聞いて話に食いついてきたように、まだ結婚には未練があるようだし、達観した桑野のペースを乱すブロガー・やっくんの存在が、今後桑野にどういった刺激を与えていくのか。そして早坂先生との関係は語られるのか。相変わらず面白い桑野の生態を今後も観察していこう。

(文=本 手)

■放送情報
『まだ結婚できない男』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54
出演:阿部寛、吉田羊、深川麻衣、塚本高史、咲妃みゆ、平祐奈、阿南敦子、奈緒、荒井敦史、小野寺ずる、美音、不破万作、三浦理恵子、尾美としのり、稲森いずみ、草笛光子
脚本:尾崎将也
演出:三宅喜重(カンテレ)、小松隆志(MMJ)、植田尚(MMJ)
チーフプロデューサー:安藤和久(カンテレ)、東城祐司(MMJ)
プロデューサー:米田孝(カンテレ)、伊藤達哉(MMJ)、木曽貴美子(MMJ)
制作著作:カンテレ、MMJ(メディアミックス・ジャパン)
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/kekkondekinaiotoko/

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