『蜜蜂と遠雷』インタビュー
松岡茉優×鈴鹿央士が明かす、『蜜蜂と遠雷』月夜の連弾シーン秘話 「あの空間全部が好きでした」
3年に一度、若手ピアニストの登竜門として注目される芳ヶ江国際ピアノコンクールに挑むコンテスタントたちの群像劇を描いた恩田陸の『蜜蜂と遠雷』が実写映画化された。
本作では4名の天才ピアニストにスポットが当てられる。映画の主人公で、母親の死をきっかけに表舞台から消えていた元天才少女の栄伝亜夜。普段は楽器店で働き、“生活者の音楽”を掲げる最年長の明石。コンクールの大本命で「ジュリアード王子」と注目の的であるマサル。そして、今は亡き著名なピアニスト・ホフマンに送り込まれ、コンクールに嵐を巻き起こす最年少・風間塵。それぞれの想いをかけ、刺激を受け合いながら、音楽と向き合っていく。
本作で主人公の天才少女・亜夜を演じた松岡茉優と、“ピアノの神”が遺した異端児・風間塵を演じ、本作でスクリーンデビューを果たした鈴鹿央士にインタビューを行った。
鈴鹿「この作品がデビュー作で良かった」
ーー完成した作品を見た時、どんな思いでしたか。
松岡茉優(以下、松岡):1カ月半ほどの撮影期間で1シーン1シーンを大事に撮っていたので、感覚的には結構長い映画になるんじゃないかなと思っていたんです。けれど、出来上がった作品を観たら、石川(慶)監督の想定通りの2時間で収まっていて、疾走感のある映画になったんだなと感じました。ポーランドで勉強された監督や撮影監督のピオトル(・ニエミイスキ)によって、日本映画離れした映像美に仕上がっていて、新しい音楽映画ができたんじゃないかなという自信が持てました。
鈴鹿央士(以下、鈴鹿):僕は初めての俳優の仕事だったので、自分が見ていた現場での景色と、カメラを通しての「色」が違うんだというのを知ったことが発見でした。それと台本にあるト書きを読んで、どうやって映像になるんだろうと考えていた部分を実際に見た時の驚きが大きかったです。現場では皆さんが温かく迎えてくださって、本当に居心地のいい空間だなと思いながら撮影していました。
ーースクリーンに自分が写っている姿を見て、どうでしたか?
鈴鹿:気づいたらもう4回も見ていたのですが、初めて見た時は「あぁ、映ってるなぁ」と率直に感じて。ここカットされているな、使われてるな、とか、こういうとこ撮られてたんだとか。そして、やっぱり感動しました。僕が登場しない場面はどんな風に撮影されているのかは知らなかったので、最後の松岡さんが本選で弾くまでのシーンとか、僕がバルトークを弾いてるシーンから繋がるところとか、こういう映像になったんだなと感動して。久しぶりに達成感とか色んなものを感じました。
松岡:何もかもが初体験だもんね。エンドロールに名前が出てきた時は?
鈴鹿:「鈴鹿央士(新人)」って出てきて、「あぁ、新人だ」と思って。
松岡:人生で1回だけだからね。
鈴鹿:この作品がデビュー作で良かったなと思って。作品に関わったんだなと実感が湧いてきたし、率直に「すごい」と思いました。