『結婚できない男』『時効警察』『おっさんずラブ』 続編ドラマの“カップル問題”を考える

『結婚できない男』『時効警察』『おっさんずラブ』 続編ドラマの“カップル問題”を考える

『時効警察はじめました』(c)テレビ朝日

 前作ファンをがっかりさせないという点で見事だったのは、『時効警察はじめました』(10月11日金曜スタート、テレビ朝日系)である。先に放送された『時効警察・復活スペシャル』で、『結婚できない男』とほぼ同じく12年ぶりにシリーズ再開したのだが、主人公の霧山(オダギリジョー)とその助手・三日月(麻生久美子)はずっと会っていなかったという驚きの展開に。恋愛がメインではない脱力系コメディとはいえ、同僚以上恋人未満の2人の関係は気になるところだ。そこで、脚本・監督の三木聡がさすがにうまかったのは、三日月が空白の期間にいったん結婚したものの離婚したという設定にしたこと。スーパーキュートで恋愛に積極的な三日月に、12年もの間、何もないわけはない。そこにリアリティを持たせつつ、でも、現在は離婚したから霧山とくっつく展開もありという、うまい落とし所を着地させた。何よりオダギリ&麻生をはじめ、キャストが全員続投なので、これまでのファンから不満が出ることはなさそうだ。

 『時効警察』の好評ぶりを見ても、カップルや相棒を演じるキャストは続投がベスト。しかし、さまざまな事情でそれができないことも多い。制作者の立場に立ってみれば、キャストはそろわないが、視聴率のデータを見ると、続編はやはり強いので、相手役を代えてでも再開すれば、新シリーズを始めるよりは数字が取れる見込みがあると考えるのではないか。ましてや今期は10月改編で、テレビ局にとっては“最も失敗できないクール”であり、ドラマの主演には木村拓哉、阿部寛、田中圭というヒットの実績がある俳優を据えなければならない。

 しかし、そんな供給側の事情は見る側には関係がないので、われわれ視聴者は割り切れない。「どうしてそんなにカップル変更が嫌なのか?」と問われれば、答えはわりとシンプルなことで、昭和の昔から変わらない気がする。映画とちがい、テレビドラマは自宅で見るもの。女性たちは仕事先から帰ってきて夕ご飯を作って後片付けをし、ようやく夜10時ごろに家事がひと段落し、テレビの前に座る。そこで、しばし現実を忘れて恋愛ドラマを楽しむ。しかし、現実逃避するための娯楽とはいっても、まったく現実離れした設定だと、なかなか入り込めないので、歴代のヒットした恋愛ドラマには、必ず女性が共感できるヒロイン、または相手役がいた。

 『結婚できない男』の夏美の境遇には、真面目に勉強して医師という仕事に就いたのに、アラフォーで独身というだけで、男性から「(女として)錆びついている」「あんな料理じゃ結婚できない」と言われてしまうというリアリティがあった。また、『おっさんずラブ』の牧は男性だが、仕事で疲れていても好きな人のためにご飯やお弁当を作る姿には、自分たちの日常を投影できた。彼女や彼は女性にとって分身のようなキャラクターであり、同じしんどさを抱えているからこそ、彼女たちが愛されて幸せになれば、まるで自分が報われたようでうれしくなる。反対に、続編で主人公が別の相手と恋をすることになってしまうと、まるで自分が捨てられたような悲しい気持ちになるのかもしれない。

 その悲しみを上回る楽しさを提供できるかどうか。カップル変更した続編にはそれが問われる。筆者は脚本家の力量からして『まだ結婚できない男』にはその勝算が充分にあると思う。同じ展開の繰り返しではなく、桑野が一度、恋愛に失敗したという過去を経ているからこその深化した人間ドラマを期待したい。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
『まだ結婚できない男』
カンテレ・フジテレビ系にて、10月8日(火)スタート 毎週火曜21:00~21:54
※初回は15分拡大(21:00~22:09)
出演:阿部寛、吉田羊、深川麻衣、塚本高史、咲妃みゆ、平祐奈、阿南敦子、奈緒、荒井敦史、小野寺ずる、美音、不破万作、三浦理恵子、尾美としのり、稲森いずみ、草笛光子
脚本:尾崎将也
演出:三宅喜重(カンテレ)、小松隆志(MMJ)、植田尚(MMJ)
チーフプロデューサー:安藤和久(カンテレ)、東城祐司(MMJ)
プロデューサー:米田孝(カンテレ)、伊藤達哉(MMJ)、木曽貴美子(MMJ)
制作著作:カンテレ、MMJ(メディアミックス・ジャパン)
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/kekkondekinaiotoko/

土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』
11月2日(土)スタート 毎週土曜23:15~24:05放送
出演:田中圭、千葉雄大、戸次重幸、佐津川愛美、木崎ゆりあ、鈴鹿央士、片岡京子、MEGUMI、正名僕蔵、吉田鋼太郎
エグゼクティブプロデューサー:桑田潔(テレビ朝日)
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、神馬由季(アズバーズ)、松野千鶴子(アズバーズ)
脚本:徳尾浩司
演出:瑠東東一郎、Yuki Saito、山本大輔
音楽:河野伸
制作著作:テレビ朝日
制作協力:アズバーズ
(c)テレビ朝日

金曜ナイトドラマ『時効警察はじめました』
テレビ朝日系にて、10月11日(金)スタート
毎週金曜23:15~深夜0:15放送(※一部地域を除く)
出演:オダギリジョー、麻生久美子、吉岡里帆、豊原功補、ふせえり、江口のりこ、緋田康人、光石研、岩松了、磯村勇斗、内藤理沙、田中真琴
脚本・監督:三木聡ほか
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、遠田孝一(MMJ)、山本喜彦(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/jikou2019/

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