第71回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞 ジャファル・パナヒ監督最新作『ある女優の不在』12月公開

『ある女優の不在』12月公開

 第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞した、ジャファル・パナヒ監督最新作『3 Faces(原題)』が、『ある女優の不在』の邦題で12月13日より公開されることが決定した。

 長編デビュー作『白い風船』でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)、『チャドルと生きる』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞、『オフサイド・ガールズ』でベルリン国際映画祭銀熊賞を相次いで受賞、わずか10年余りで世界三大映画祭を制したパナヒ監督は、その快挙によって名実共にイランを代表する国際的なフィルムメーカーとなった。しかし、社会の不条理な現実を描いたことで政府当局と対立し、2度にわたる逮捕を経験。2010年には20年間もの映画製作禁止を命じられた。

 それでもパナヒは自宅軟禁中に作り上げた『これは映画ではない』をカンヌ映画祭などに出品し、その後も『閉ざされたカーテン』『人生タクシー』を発表。断固として権力の圧力に屈しない姿勢と、実験精神やユーモアに満ちあふれた作風で賞賛を集めてきた。そして最新作となる本作では、過去、現在、未来の3つの時代をシンボリックに体現する3人の女優をめぐる深遠なドラマを映像化し、2018年の第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞した。

 イランの人気女優ベーナズ・ジャファリのもとに、見知らぬ少女からの悲痛な動画メッセージが届いた。その映画好きの少女マルズィエは、女優を志して芸術大学に合格したが、家族の裏切りによって夢を砕かれて自殺を決意。その動画はマルズィエが首にロープをかけ、カメラ代わりのスマートフォンが地面に落下したところで途切れていた。動画のあまりにも深刻な内容に衝撃を受けたジャファリは、友人である映画監督ジャファル・パナヒが運転する車でマルズィエが住むイラン北西部の村を訪れる。マルズィエは本当に命を絶ってしまったのか。やがて現地調査を行うジャファリとパナヒは、イラン革命後に演じることを禁じられた往年のスター女優シャールザードにまつわる悲劇的な真実を探りあてていく。

 本作でパナヒが挑んだのは、映画/芸術の表現の自由、女優/女性の人生という切実なテーマ。女優としての“未来”を奪われた少女の自殺問題を発端とする物語は、“現在”を生きる有名女優ジャファリの心を激しく揺さぶり、イラン革命前に活躍しながらも今は隠遁生活を送る元スター女優シャールザードの悲劇的な“過去”を浮かび上がらせていく。

■公開情報
『ある女優の不在』
12月13日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:ジャファル・パナヒ
出演:ベーナズ・ジャファリ、ジャファル・パナヒ、マルズィエ・レザイ
配給:キノフィルムズ
2018年/イラン/ペルシャ語・トルコ語/カラー/ビスタ/5.1ch/100分/原題:3 Faces
(c)Jafar Panahi Film Production
公式サイト:3faces.jp

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