広瀬すずが振り返る、『なつぞら』に捧げた1年間 「ギリギリなところで余裕を持って」
「大好きな人たちに囲まれる環境が幸せ」
ーー共演者の方はみなさん「広瀬さんが現場で台本を読んでいる姿を見たことがない」と言っていました。
広瀬:台本は現場には持っていかないのですが、撮影するシーンがわからなくなったら遠慮なく助監督さんやメイクさんの台本を借りて見てましたよ(笑)。動いてイメージがついたら意外と忘れないので、本番よりリハで完璧にしておきたいタイプなんです。忘れたくらいで演じて、新鮮味が戻ってきた方が面白かったりするので、変に意識せずラフにいました。共演者の人に「(広瀬さんが)完璧だからちゃんと覚えていかなきゃいけないなと思うんだよね」と言われたこともあったんですけど、長い間やっているので、だんだんセリフ覚えが良くなっていくんです(笑)。
ーー撮影前日に家で読むんですか?
広瀬:最初は、迷惑かけれないなと思って、本番の前日にシーンをチェックしていたんですけど、だんだんやらなくなってきて。今日撮影するシーンもリハを1週間前にしたんですけど、現場にいたら思い出すかなという感覚でやっています。喋っていると、だんだん思い出してくるから、その場で思いついた言葉のように出てきて面白いんじゃないかなと。そうすると感情が入りやすいので、ギリギリなところで余裕を持ってやっています。
ーー18週で坂場さんに別れを切り出す喫茶店での長ゼリフも?
広瀬:そうですね。でもあのシーンが『なつぞら』の中で一番緊張しました。リハを1、2回だけやって、現場に入ると、座り位置だけ確認して本番一発勝負だったんです。完璧にしているわけではないですけど、頭にはなんとなく入っているギリギリの余裕な状態を楽しんでいました。私は常に出ていて、『なつぞら』以外のことを考える時間がそもそもないので、他の現場を掛け持っているキャストと比べてそこは得していたかもしれません。
ーー放送では、なつがついに千遥との再会を果たしました。清原果耶さんと実際に演じてみていかがでしたか?
広瀬:最後の2週で千遥との距離がぐっと近くなるんですけど、2週では足りないなって(笑)。清原ちゃんは映画で共演したことがあって、近いところにいる人だと思っていました。なので30年ぶりの再会を演じるとなると、少し掴めない感覚がありました。実際に清原ちゃんとどのシーンをやってもしっくり来なかったんです。それは上手くできなかったわけではなく、存在も近いようで会わなかったし、前の作品ではライバル関係だったし、姉妹の距離感がわからなくて、でもその戸惑いこそが30年ぶりに家族に会えた距離感なんだろうなと。でも、もう一回家族になりたいと思うなつだから、距離を縮めようとするんですけど、喋っている自分に居心地が悪くなってきて、そういった変なモヤモヤ感がずっと自分の中にありました。
ーー清原さんをはじめ、『なつぞら』にはこれまで広瀬さんが他の作品で共演された役者がたくさんキャスティングされていました。ここまでの女優人生を振り返る機会でもあったのかなと。
広瀬:ドラマ、映画、CMと全ジャンルの人たちが集まっている感じがありました。距離の近い人がたくさん集まっているので、実の姉とお芝居するくらいのやりづらさがありました(笑)。それこそ(中川)大志くんやリリー(・フランキー)さんは、私を中学生の頃から知っていて。リリーさんは同じ作品に出るのが5回目なんですけど、今まで一瞬だったり親子役なのに会わないことが続いていて、初めてちゃんとした絡みがあったので、やりづらいなと思ってしまうくらい距離が近い存在です。大志くんも同い年で、天陽くん(吉沢亮)となつじゃないけど、同志みたいな感覚でいました。20歳になって夫婦役を2人でできるのも不思議だねと話してたくらいで、いろんな人に特別感があって、恥ずかしいですけど、大好きな人たちに囲まれる環境が幸せだなと思いながらやってたから、楽しいがずっと勝ってたのかもしれないです。でも、未だにやりづらさはあります(笑)。