ギャンブル狂から大根侍、腹黒アイドルまで 浜辺美波、“ぶっ飛びキャラ”を総取り

浜辺美波、“ぶっ飛びキャラ”を総取り

 だが、一年以上の時を経て放送された第二期では、その“振り切れ具合”が実に安定して見えた。“安定した振り切れ具合”……というと妙な話だが、安心して彼女のエキセントリックな姿を楽しめたのは事実である。この間に、『崖っぷちホテル!』(2018/日本テレビ系)で空気が読めないパティシエをハイテンションで演じ、一途でおバカな女子高生に扮した映画『センセイ君主』(2018)が公開されたのも、彼女の経験としては大きかったはずだ。前者では多くの先輩たちの中で揉まれ、後者は竹内涼真とのダブル主演で、作品を率いる強いパワーを放っていた。これが『映画 賭ケグルイ』(2019)とまでなると、そこにはある種の貫禄すら感じたものである。第二期以降に登場する、池田エライザ、福原遥、宮沢氷魚といった、次世代を担う俳優たちを前に臆することなく、座長としての力量を十分に感じさせられたのだ。初夏に放送された『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)内の『大根侍』にて、大根を生真面目に豪快に振り回していた姿も記憶に新しい。

(c)2018 「センセイ君主」製作委員会 (c)幸田もも子/集英社

 しかしもちろん、浜辺の得意とするのはこの手のキャラクターだけではない。自身の代表作の一つである『君の膵臓をたべたい』(2017)で演じた純白のヒロイン(といっても、純粋で平凡な少年を翻弄する様は“ぶっ飛んでいる”とも言えるが……)や、公開中の『アルキメデスの大戦』では、控えめだが芯のあるヒロインに扮し、作品に華を添えている。

『ピュア!~一日アイドル署長の事件簿~』写真提供=NHK

 こんな両極端にある人物像を、見事に符合させているのが、『ピュア!』で演じる“腹黒アイドル”役だろう。アイドル然としたルックスで笑顔を振りまきながら、その実、裏の顔は周囲の人間の足をすくってやろうと、虎視眈々、考えを巡らせているような問題ガールだ。しかし、浜辺自身が放ち、作品に与える清廉な快活さは抑えようがない。これは本人が生まれ持った素質というのももちろんあるのだろうが、やはりヒロインポジションで作品を重ねるごとに磨かれた要素は大きいはずである。ここに、お得意の“ぶっ飛びキャラ”が合わさり、その優れたバランス感覚で、私たちを楽しませてくれるのだ。

 まだ10代とあって、無限の可能性を秘めている浜辺美波。“特異なキャラ”という武器を磨きつつ、さらなるポテンシャルの開花に期待である。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■放送情報
特集ドラマ『ピュア!~一日アイドル署長の事件簿~』
2019年8月13日(火)〜8月15日(木)
午後10:00より3夜連続放送
出演:浜辺美波、東出昌大、長村航希、六角精児/忍成修吾、大塚千弘、東風万智子、郭智博、大島蓉子、大石吾朗、団時朗ほか
作:蒔田光治
音楽:辻陽
制作統括:後藤高久(NHKエンタープライズ)、佐藤毅(東宝映画)、高橋練(NHK)
プロデューサー:櫻井美恵子(東宝映画)
演出:藤原知之
写真提供=NHK

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