ロック様の筋肉が原動力!? 『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』でも健在の“ピープルズ演技”

『ワイスピ』ロック様の“ピープルズ演技”

 ただし、本作に短所がないワケではない。基本的にお話がアクション→楽屋オチ系の漫才→アクションの繰り返しなので、私はやや冗長に感じた。そして最大の問題は『ワイルド・スピード』とあまり関係がないことだ。『ワイスピ』はカーアクション映画であるが、同時に“ダチ”“家族”=“ファミリー”の絆を描く熱血ドラマでもある。本作はこうした部分がシリーズでも特に弱い。正直、『ワイスピ』ファンである私は不満にも思った。しかし、これはスピンオフである。そしてドウェイン・ジョンソンは次回の『ワイスピ』本伝には出演しないそうだ。今後はヴィン・ディーゼルの『ワイスピ』と、ドウェイン・ジョンソンの『ワイスピ』がシリーズ化していくのだろう(どんなフランチャイズだ)。流行りのユニバース化にも見えるが、私はこれをユニバース化ではなくパラレル化と呼びたい。

 話は変わるが、私は本作に一番近い作品は『魔法少女リリカルなのは』だと思っている。『なのは』は元々『とらいあんぐるハート3 リリカルおもちゃ箱』(2001年、奇しくも『ワイスピ』1作目と同じ年だ)についていたオマケ企画だった。それが色々あってアニメとなり、あれよあれよという間に戦闘シーンに気合がドンドン入っていき、今や魔法少女バトルアニメの金字塔となった。『とらいあんぐるハート3』から『なのは』という熱血バトルアニメを作り出したのは「魔法」だったが、『ワイスピ』から『スーパーコンボ』を作り出したのは筋肉、特に主演を務めるドウェイン・ジョンソンの筋肉だ。いわば『スーパーコンボ』は『肉弾野郎マッスルほぶす』である。

 『ワイスピ』とは別物と考え、『肉弾野郎マッスルほぶす』の第1弾と捉えれば荒削りな部分も納得できる。とりあえず今は続編を待ちたい。そして次は撮影期間をちゃんと確保してください。これ、何が恐ろしいかっていうと、100億円くらい突っ込んでいる映画なのに1年ちょいで撮ってるんですよ。ハリウッドってスゲェや。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』
全国公開中
出演:ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサム、イドリス・エルバ、ヴァネッサ・カービー
監督:デヴィッド・リーチ
脚本:クリス・モーガン
提供:ユニバーサル・ピクチャーズ
配給:東宝東和
(c)UNIVERSAL PICTURES
公式サイト:https://wildspeed-official.jp/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる