『なつぞら』山田裕貴×鈴木杏樹、相手を思うが故の選択 ターニングポイントを迎えたなつと雪次郎
傷心の雪次郎から蘭子の家でのことを聞いたなつは「自分といると雪次郎くんが不幸になるって、そう思ったってことでしょ。蘭子さんにとって生きることは舞台に立つことで、そのために誰も犠牲にしたくないって、本気でそう思って生きているとしか思えない」と言ったが、恋愛と仕事とを切り離して考えるなつだからこその説得力のある言葉だ。
彼女の芝居を初めて観て「アマチュア精神を感じた」という雪次郎の言葉は本心からで、それは蘭子にとっても大先輩から伝えられた大切な言葉でもあった。蘭子が芝居の稽古中に雪次郎に対して「あの人の分も生きて、演じてほしいのよ。頑張ってほしいの。これからも」という言葉にも嘘はなかっただろう。芝居を通じて特別な結びつきを感じる相手と出会えたことは奇跡のようでもあり、2人にとってかけがえのない思い出にもなったはずだ。でも、人は誰かの身代わりになったり、犠牲になって幸せにはなれるものではない。
蘭子に厳しい言葉を投げつけられ、自分と向き合った雪次郎は帯広に戻り、実家の菓子屋「雪月」を継ぐことを決めていた。天陽(吉沢亮)の家に行った雪次郎は、「なっちゃんは相変わらずだ」「どんどん先行くぞ。脇目も振らずって感じだな」と、なつの近況を天陽に語る。
雪次郎がなつに坂場のことが好きなのかと聞いたとき、なつは「一緒に生きられたらいいなと思うけどね」と答えていた。「好きでも一緒に生きられないことだってあるし、たとえ相手に好きになってもらえなくても、好きなことが同じなら一緒に生きられることもある」というなつ。感情に流されたり、依存するのではなく、好きなことが同じで同志としての結びつきを求めるのは、姉妹のように育った夕見子(福地桃子)の影響もあるのかもしれない。
仕事と恋愛でターニングポイントを迎えたなつと雪次郎。第18週は坂場がなつにプロポーズするという見逃せない展開が待っているようだ。
■池沢奈々見
恋愛ライター、コラムニスト。
■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮、清原翔/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/