『ボイス』唐沢寿明×真木よう子の悲哀に満ちた過去を描く 「音」を活かした作品設定が魅力に

『ボイス』唐沢寿明×真木よう子の因縁

 いずれにせよ、この歳月を経たひかりは緊急指令室にまだ見ぬ可能性を感じ、ECU(Emergency Call Unit)という捜査ユニットの設立を提案するまでに成長する。そして、本作が「タイムリミットサスペンス」と銘打たれる所以には、この設定のユニークさが一役買っている。

 ECUが志すのは、電話による通報から3分で現場に到着し、5分で現場確認、10分で検挙をめざすというフロー。これは、電話を受けてから10分間で犯人を逮捕しなければ、被害者の生死が決定づけられてしまうことを想定したものだ。ひかりをはじめとする“ボイスプロファイラー(声紋分析官)”たちが「声」を聞き分け、「10分」で答えを導き出すというタイムリミットサスペンスとしてのこの作劇が、本作の特異さを際立たせている。初回放送では10分が経過してしまったところで一旦幕を閉じ、事件の結末は第2話へと受け継がれた。

 「音」を聞き分けて、そのわずかな情報から犯人を特定するという設定と似たストーリーの形式として、今年公開され話題となった映画『THE GUILTY/ギルティ』が記憶に新しい。また、短いタイムリミットのなかで犯罪を未然に防ぐというのは、トム・クルーズ主演の映画『マイノリティ・リポート』を彷彿とさせるものだ。「音」によって聴覚を刺激し、スピーディーな展開によって視覚を刺激するこの設定は、うまくハマれば視聴者をハラハラドキドキさせる極上のサスペンスドラマになりうる。唐沢寿明と真木よう子による緊密なコンビネーションや、現場でのバディ関係となる増田貴久(NEWS)と繰り広げるアクションにも期待しながら、1話1話のストーリーに注目していきたい。

■原航平
ライター/編集者。1995年生まれ。映画、ドラマ、演劇など、とにかく物語と役者に興味津々。大学時代の卒業論文の題材は「疑似家族を描く日本映画について」。Twitterブログ

■放送情報
『ボイス 110緊急指令室』
日本テレビ系にて、7月13日(土)スタート 毎週土曜22:00〜放送
出演:唐沢寿明、真木よう子、増田貴久、木村祐一
原作:“Based on the series “Voice”, produced and distributed by Studio Dragon Corporation and CJ ENM Co., Ltd”
脚本:浜田秀哉
音楽:ゲイリー芦屋
演出:大谷太郎、久保田充
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:尾上貴洋、後藤庸介(日テレアックスオン)
制作協力:日テレアックスオン
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/voice/

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