『いだてん』秀逸な「タイトルバック」はいかに生まれたか 映像作家・上田大樹に聞く

『いだてん』秀逸な「タイトルバック」はいかに生まれたか 映像作家・上田大樹に聞く

 回を重ねるごとに視聴者の熱が増し続けているNHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』。第一部金栗四三(中村勘九郎)篇が大団円を迎え、6月30日の放送より第二部田畑政治(阿部サダヲ)篇がスタートする。宮藤官九郎の緻密に練られた脚本、オールスターキャストと言っていい出演者たちの適材適所の好演など、見どころは数多くあるが、第1回放送時より注目されていたのが「タイトルバック」だ。

 大河ドラマの「タイトルバック」といえば、壮大なテーマ曲と、雄大な風景描写を組み合わせたものがこれまでのイメージだったろう。だが、本作『いだてん』では、『あまちゃん』などでもおなじみの音楽家・大友良英の曲を背景に、主人公である四三が東京の街を走る姿、田畑が川を泳ぐ姿、そして過去のオリンピック映像などとのコラージュなど、実に凝った映像で視聴者をワクワクさせるものに仕上がっている。

 リアルサウンド映画部では、本作のタイトルバックを手がけた映像作家・上田大樹氏にインタビュー。大人計画、劇団☆新感線などの劇中映像や、映画『バクマン。』のプロジェクションマッピングなど、多彩な表現技法で観る者を楽しませてきた彼が、『いだてん』ではどんな試みを行ったのか。じっくりと話を聞いた。

“格好いい映像”よりも“心を動かす映像”

ーーこれまでも数々の作品を手がけていますが、1年間放送される「大河ドラマ」のオファーを受けたときの印象は?

上田大樹(以下、上田):脚本の宮藤(官九郎)さんも、演出の井上(剛)さんも、大根(仁)さんも、以前にお仕事をご一緒させていただいたことがありました。音楽を手がける大友(良英)さんも含めて、自分がいちファンとしても楽しんでいた『あまちゃん』チームの皆さんが沢山いる。好きな方々が集まったチームだったので、声をかけていただいて光栄だし、本当に嬉しかったです。

ーータイトルバックはどういった形でイメージしていったのでしょうか。

上田:総合演出の井上さんほか、皆さんと相談しながら枠組みを作っていきました。2人の主人公(金栗四三/田畑政治)が、色んな時代をまたいでいく、というのがテーマとしてまずありました。膨大な資料映像と山口晃さんの絵をを組み合わせながら、主人公たちが江戸から昭和を駆け抜けていくというイメージで作り上げていきました。

ーー大友さんのテーマソングとも非常にマッチしています。

上田:過去の大河ドラマで使用している曲よりも短めなのですが、その分いい意味でゆったりするところがなく最初から最後まで勢いよく駆け抜ける感じがすごく好きです。この曲によって、全体の方向性も決まりました。

ーータイトルバックの映像の中で特に印象的なのが、現代の生活の様子とオリンピックに出場したアスリートたちの映像がシンクロするところです。聖火ランナーとロウソクが刺さった誕生ケーキを運ぶ姿、バーベル上げ選手と赤ちゃんに高い高いをするお母さんの姿など、その組み合わせ方が非常に秀逸でした。

上田:ありがとうございます。『いだてん』はこれまでの大河ドラマと異なり、武将や偉人というわけではなく、現在の私たちと地続きの時代を生きる“市井”の方々が主役です。視聴者の方に身近に感じてもらうこと、そして現代へと繋がっていくことをイメージする中であの形になりました。演出の井上さんとも、「“格好いい映像”よりも“心を動かす映像”」という意識を擦り合わせていきました。

ーーこれだけ多種多様な映像が入っていると権利関係もなかなか大変だったのでは。

同席した制作総括の清水拓哉:IOC(国際オリンピック委員会)的にはオリンピック映像がほかの映像と混ざるのをすごく嫌がるんです。今回も最初のイメージを先方に伝えた際は難色を示されました。でも、IOCの幹部の方々が東京に来たときに、上田さんが作成した仮動画をお見せしたらすごく喜んでくださったんです。そこで権利関係はOKになりました。東京の町並みの映像は、NHKのアーカイブだけではなく、海外のアーカイブスからも買っています。だからこそ、IOCの方々が喜んでくださり、許可を得ることができたときは本当にうれしかったです。普通であればありえないようなので。

上田:いろんな写真や動画を使用しているので、沢山の方々が権利関係に奔走していただいたと聞きました。本当に皆さんのおかげで作ることができたと思います。

ーー驚かされたのは使用している多彩な記録映像が回によって変化していたことでした。途中からはスヤ(綾瀬はるか)さんも登場したり。タイトルバックを更新していくというのは最初から想定されていたのでしょうか。

上田:更新していく、というイメージはあったのですが、第○回で変える、というようなカッチリしたものを決めていたわけではありません。本編の流れに合わせて柔軟に変えていったら楽しいよね、という感じでした。ワンクールのドラマだと変えてみようと思ってもなかなかできないので、1年間にわたる大河ドラマだからこそできた試みと言えるかもしれません。

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