橘ケンチが語る、EXILEで見出した独自のスタンスと舞台『魍魎の匣』への挑戦

橘ケンチ『魍魎の匣』インタビュー

「EXILEのイメージにないことを」

橘ケンチ

――ケンチさんにも、自分の思うようにいかなかった時期があったのですね。

橘:もちろんありました。EXILEに入って数年経った頃で、EXILE THE SECONDとしても活動する前後だったと思います。僕がEXILEに加入したときは、すでにトップグループだったので、「なんとか先輩方に追いつかないと」と必死でした。そのために背伸びをしすぎていたところがあって、次第にぽっかり心に穴があいたような気持ちになってしまったんです。何をすればグループに貢献できるだろうと悩んでいて、ほかのメンバーがだんだんと個性を出していく中で、自分がどういう方向性に進めば良いかがわからなくなっていました。その頃にひたすら本を読んで、ずいぶんと本に助けられましたし、逆に言えば、その時期があったからこそ今があります。

――EXILEの新メンバーには、新メンバーだからこその悩みもあった、と。

橘:もともとのメンバー7人にはすでに確固たるものがありましたから、新メンバーがいかに経験を積んで、EXILEにおけるアイデンティティを確立していくかは重要な課題でした。同時期に入ったNAOTOと小林直己は、三代目 J SOUL BROTHERSとしても活動することになったので、新しいグループをゼロから築き上げる作業をしていましたが、ほかの5人のメンバーは何をすべきかがまだ見えていなかったと思います。HIROさんはきっと、そのことに気づいたからこそ、僕らにTHE SECONDをやるように言ってくださったんだと思います。THE SECONDでゼロから積み上げる経験を積ませていただきました。

橘ケンチ
――以前、EXILE THE SECONDの結成の際に、HIROさんから「無理なしで」という言葉をかけられたというエピソードを読んだのですが。

橘:HIROさんがいつも使う言葉なんですけど、意味としては「任せるよ」ということなんです。例えば、「今日よかったらここにくる? 無理なしで」という感じで、「予定があったら、気にしないで断っても大丈夫だよ」という意味なんです。でも、HIROさんに誘われたら僕らは喜んで「100%行きます!」と言っちゃうんですけど(笑)。THE SECONDも、無理をせずにやりたかったらやってね、という感じで、気遣っていただいた感じです。だからこそ、僕も自分なりの方向性を見いだすことができたのだと思います。

――THE SECONDとしても活動する中で、自分らしさを見出していったわけですね。

橘:そうですね。当時は自分がEXILEの王道のイメージに合っているのか悩んでいて、自分の好きなこと、好奇心が向くところが、EXILEの方向性とズレていると感じることが多かったんです。「これはEXILEらしくないからできない」と、勝手に判断してるところがあって。でも様々な活動を続けていく中で、逆にEXILEが本好きだったら面白いんじゃないか、むしろEXILEのイメージにないことを自分がやることで裾野を広げていければ、グループに貢献できるんじゃないかと、柔軟に考えられるようになっていきました。EXILEが日本酒を作ったり、本を読んでいるのは、意外性があって面白いなと。グループにいろんな趣味嗜好の人がいて、お互いに違う個性をちゃんと肯定できて周りが受け入れる環境ができると、その組織は強くなると思うんです。だから、EXILEの可能性を広げていくという意味でも、僕が率先して今までのEXILEのイメージから外れていこうかなと。

――そうした経験が、ケンチさんの現在の文化的な活動に繋がっているのですね。日本酒にしても『たちばな書店』にしても、すべての活動がケンチさんのイメージを形作っていて、今回の舞台もそういうめぐり合わせなのだと感じました。

橘:そう思っていただけたら最高です。このタイミングで『魍魎の匣』をやらせてもらえることになったのも、今までの活動の成果といえるかもしれません。主人公の“京極堂”も古本屋をやっていますし、作品自体も数々の賞を獲っている文学作品ですので。自分がやってきたことが良い形でハマってきて、その一つとして今回の『魍魎の匣』もあるという気がしています。

――では最後に、舞台『魍魎の匣』の魅力を改めて教えてください。

橘:決して明るい作品ではなくて、ハッピーエンドを迎える作品でもありません。でも、僕自身は結末がさびしかったり悲しかったりする映画や舞台の方が、ずっと心に残っていくタイプで、この作品は確実にそういう方向性の作品です。劇場に足を運んでくれた方の人生に、何かを投げかけられるような、人生の1ページを変えられるような作品になればと思っていますので、ぜひ楽しみにしていてください。

(取材・文=西森路代/写真=三橋優美子)

魍魎の匣
■舞台情報
舞台「魍魎の匣」
<東京公演>
6月21(金)~30日(日)/天王洲 銀河劇場
<神戸公演>
7月4(木)~7日(日)/AiiA 2.5 Theater Kobe
【料金】全席指定 8500円

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<応募締切>
2019年7月7日(日)

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