橘ケンチが語る、EXILEで見出した独自のスタンスと舞台『魍魎の匣』への挑戦
「表と裏の仕事に境界があまりない」
――LDH ASIAのスタッフワークでは、具体的にどんなことをしているのですか。
橘:LDH ASIAは、日本のエンターテイメント文化をアジアに発信していくのをテーマにしていて、所属アーティストがアジアでライブをするためのサポートはもちろん、日本のキャラクターやコンテンツをアジアに輸出することも、スタッフ全員でやっています。最近だと、サンリオとコラボしたキャラクター「ハローメンディー」も、LDH ASIAのプロジェクトです。
――アーティスト活動以外でも、幅広く活躍しているのですね。
橘:もともとEXILEは、リーダーのHIROさんがメンバーでもあり社長でもあったので、アーティスト自身が事業にも携わるのが文化として根付いているんです。グループの次の展開を考えるときも、メンバー同士で「次のライブはこうしよう、シングルやアルバムはこういうテーマでいこう」と話し合って、それをHIROさんがスタッフに伝えて、形にしていくというスタイルでした。そういうHIROさんの姿を見ていたので、表と裏の仕事に境界があまりないんです。自分としてもEXILEを10年近くやった今、アーティストとしての表現だけでなく、裏方もやって、会社全体を盛り上げていけるメンバーになりたいですし、アーティストの目線を提供するコンテンツやサービスに落とし込めるのが、LDHの良いところだとも思います。
――『月刊EXILE』では、海外の映画監督との対談もしていますし、書籍を紹介するプロジェクト『たちばな書店』も運営しています。そうした企画で取り上げる作品は、どんな視点で選んでいますか?
橘:対談に関しては、できる限り海外の監督とお話ししたいと担当編集者に伝えています。対談を続けているうちに、映画の宣伝の方にも興味を抱いてもらえるようになって、先日はなんとガス・ヴァン・サント監督ともお話することができました。僕自身の好みで言うと、どちらかというとエンタメ娯楽作より社会派の作品の方が好きで、ヒューマンドラマやドキュメンタリー、ノンフィクションなどをよく鑑賞しています。あの連載が、いろんなものを生み出す場になっていくと良いですね。
――本に関しては、どういうものが好きですか?
橘:本に関しては雑食ですね。僕が本を読むようになったのは、自分の思うようにいかなかった時期に、本を読んで頑張ろうと思えたり、パワーをもらったという経験があったからなんです。色々と読んでいるうちに本好きになって、その延長として『たちばな書店』を始めました。当初はビジネス系やノンフィクションの本を読んで紹介することが多かったのですが、『月刊EXILE』で連載していくうちにいろんな作家さんとも巡り会うようになって、紹介する本の幅が広がっていきました。本屋に行ったときは、インスピレーションで本を手に取っています。本屋をぶらぶらしていて目に留まるものは、自分がそのとき気になってることなんですよね。だから本屋にいくと、心の健康診断ができるような気がしていて。自分の興味のあるもの、気にしてるものがわかるし、本のページを捲っていると、魔法にかかったのかと思うくらいそのときの自分にぴったりな言葉に出会うことも多いんです。