一番の驚きはジルベール=磯村勇斗!? 『きのう何食べた?』キャラクターと役者のマッチ度を検証
さらに他の主要キャスト、シロさんの両親(志賀廣太郎と梶芽衣子)にしろ、上町弁護士事務所の所長とその息子である若先生(高泉淳子とチャンカワイ)にしろ、もういちいちバッチリ。佳代子さんの夫の富永さん(矢柴俊博)の無邪気で悪意がないのが厄介な無神経さとか(顔もそっくり)。ケンジの美容室の店長、ヒロちゃん(マキタスポーツ)の、いい歳して落ち着けない激ワルオヤジな感じとか。
「うーん、ちょっと違うかも」と僕が感じたのは、佳代子さん役の田中美佐子と小日向さんの山本耕史、そのふたりだけだった。田中美佐子の佳代子さん、キャラの方向は合ってるんだけど、いかんせんきれいすぎておばちゃん感が足りない(実年齢は役と符合しているんだけど)。
小日向さんも同じで、もうちょっといかつくておっさんっぽい方が……ジルベールにベタ惚れして振り回されている役なので、「いやいや、あんたもたいがい男前じゃん」と、思ってしまうのだった。
逆に「やられた!」と思ったのが、そのジルベールことワタルくんを、磯村勇斗にしたこと。最初に知った時は「ないわあ」と思った。ジルベールみたいな美少年ときいていたのに、会ってみたら普通じゃん! 美少年じゃないじゃん! というキャラなのに、磯村勇斗じゃ「ほんとだ、美少年だ」ってなっちゃうでしょうが。何考えてんのよ。『ひよっこ』(NHK総合)とか観てなかったの?
と思っていたもんで、第6回(5月11日放送)の彼の登場シーンで度肝を抜かれた。ちゃんと「どこがジルベールじゃ!」なワタルになっていて。目ぇ小さいし無精髭だし、アゴの角度がいつも変だし、原作の「どことなくムサい」感じも出ているし、普通に「30になったばっか」に見えるし(実際は26歳)。「まいりました」と思いました。ただ、磯村勇斗、7月からの「ドラマ25」の『サ道』(タナカカツキ著の「サウナ好きのバイブル」の、まさかのドラマ化)にも出演するそうで、テレ東深夜ドラマのせいであらぬ方向へ突き進んでいる……と、心配な気がしなくもありません。
そして。それ以外のキャスト、原作ではその人が軸になる回もあるんだけどドラマでは今のところそこまで描かれていない、脇役の面々もいちいち絶妙なのだ。
たとえば、上町弁護士事務所の事務員、小山志乃の中村ゆりか。上町先生が負債整理・再建を手伝った洋食屋、小山軒の娘で、きりりとした美人でしっかりしていてドスの効いたキャラ。でも実は20歳そこそこだと知ってシロさんと若先生がびっくりする、という回が原作にあるのだが、まさに! なキャスティングである、中村ゆりか(22歳には見えないところまで含めて)。
この人が父親の弟子のコックと結婚し、生活していくさまも原作では描かれる。ドラマではそこまで追えないかもしれないが、観たい気持ちはとてもあります。
もうひとつたとえば。第1話と第6話に出てきた、シロさんが通うスーパー中村屋のオバちゃん、唯野未歩子。最初に観た時は「おおぅ」と思わず声が出たほどだった。よくまあこんなにドンピシャな人見つけたなあ、と。脚本家・映画監督としても活動している人なんですね。彼女とシロさんがバトルする回が5巻にあって、1話ではそのほんの一部しか使われていなかったので、続きがあることを期待します。なお6話の「閉店間際にシロさんが手にした手羽先に半額シールを貼る」は、原作にはまったくない出方です。