愛は人を変える原動力となるーー『パーフェクトワールド』『パリ、嘘つきな恋』を通して気付くこと

『パーフェクトワールド』から考える“愛すること”

 大学時代に事故に遭い、下半身不随になった建築士の鮎川樹(松坂桃李)と、高校時代の同級生で彼に片思いしていた川奈つぐみ(山本美月)の純愛を描くドラマ『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)。車いす生活を送る樹と、彼を支える存在になりたいと健気に行動していくつぐみのラブストーリーは、障がい者と健常者の恋愛という枠を越えて、誰かを愛することで生じる矛盾や障壁を浮き彫りにする。

 6月4日に放送される第7話では、互いを思い合うゆえに別れた2人が再会し、ある夫婦の夢を知ることによって違う視点で相手を見つめ直すという展開が待ち受けている。

 つぐみの恋のライバルであり、樹をサポートするヘルパーの長沢葵(中村ゆり)は、専門的な介護知識や経験がないつぐみに対して「愛だけでは乗り越えられない」「あなたより支えられるし、役に立つ自信がある」と、きつい言葉を投げかける。

 また、つぐみの父親、元久(松重豊)も樹の人生を背負えるような強さが娘のつぐみにあるとは思えず、交際を猛反対。娘の結婚相手には、病気である自分の代わりに守ってくれる男性を強く求めていた。

 「愛だけでは乗り越えられない壁がある」という現実を突きつけられたつぐみは、仕事を続けながら介護資格を取得しようと無理を重ねたことが原因で貧血を起こして線路に転落。自分の目の前で彼女が危険な目に遭っても助けることができなかったこと、彼女が自分に内緒で介護の勉強をして体調を崩していたことで苦しんだ樹は自ら別れを切り出すしかなかった。

 障害のある樹が日常で直面する困難や仕事をしていくうえで問題を克服していく姿がリアルに描いているだけに、彼女を守れない樹のつらさ、悔しさは観る者の心を動かした。一緒にいると幸せを感じられるが、幸せだと思えば思うほど、自分が相手にしてあげられないことの重さを感じてしまう。

 樹はつぐみと再会する前に、もう恋愛はしないと決めていた。樹に「相手に迷惑をかけたくない」「好きな人のことは自分が守りたいし、犠牲になるようなことはしてほしくない」という気持ちがある限り、彼は恋愛で幸せになることができないのだ。

 確かに、きれいごとを並べても愛だけは生きていけない。しかし、愛がなければ壁を乗り越えようという気力さえおきないことも人生にはあるのではないだろうか。

 娘の幸せを願う父は、自分が娘にしてきたように保護して守ってくれる男性を娘の結婚相手に望む。また、樹をサポートするヘルパーの葵は自分の知識と経験があれば彼を支えられるし、誰よりも役に立つと自負している。そして、つぐみの幼なじみで彼女に片思いしてきた是枝洋貴(瀬戸康史)は、長い間彼女を見てきた自分こそが彼女の理解者であると感じている。つまり、幸せを願う対象の気持ちよりも、自分の理想を相手に投影しているのだ。

 幸せを願ってのこととはいえ、理想の押しつけでは相手の心は動かない。つらくても、苦しみを伴っても、自分がその状況を受け入れ、自分と向き合い、許容したときに初めて幸せに向かって自分を変えることができるものではないだろうか。

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