風間俊介の快進撃が続く理由 役者、パーソナリティ、“極め過ぎたキャラ”で異彩を放つ

 俳優としては4月からスタートした『やすらぎの刻〜道』で現代パートの主人公・菊村栄(石坂浩二)が描く脚本『道』の主役・根来公平役で出演中。昭和初期の山梨が舞台のこの劇中劇で、風間が演じる公平は、なんと実年齢と20歳離れた15歳~という設定である。

 が、これがなんとも自然なのだ。日本が戦争という不穏な事態に向かう中、家族や幼なじみのハゲ、ニキビ、青っ洟らと豊かではないが明るく日々を生きる青年……というか少年役を丸めた頭で好演。野山を駆け回り、感情をストレートに出す芝居は観ていて非常に清々しい。

 さらにNHK-BSプレミアム『おしい刑事』では、たぐいまれな推理力を持ちながら、最後の最後で状況を見誤り、同僚に犯人を逮捕される刑事・押井敬史役で主演。

 こちらは、可愛い女子にはコロっと騙され、強い女性には虚勢を張って、自分を守るためにはどうでもいい嘘を吐く、言ってしまえばヘタレな刑事という役どころ。捜査に私情をガンガン持ち込む姿に「はあ?」と思いながらもどこか憎めないのは、風間の持つ天性の可愛らしさに助けられているところが大きい。

 この同時期にオンエアされている2作品の共通項は“コミカルタッチ”であること。どちらかがコメディでどちらかがシリアスならば演じわけもわかりやすくできるのだが、時代設定や年齢は違えど、両方ともアップテンポな雰囲気で物語が進む中、まったく違うキャラクターを演じる力量は並大抵のものではない。

 着実にMC業やフリートークもこなし、俳優としてのキャリアも順調に積む風間俊介。最近ではダスキンのCM等“家庭”の匂いのするシチュエーションにも馴染んでいる。

 このラインであの人の存在を思い出すのは私だけだろうか。そう、NHKの『あさイチ』で8年に渡って司会を務め、絶妙な女性への寄り添いコメントと状況を判断する頭の回転の速さで高い評価を得た事務所の先輩、井ノ原快彦だ。

 アイドルとしてセンターの立ち位置に君臨するというよりは、演技力やインプロ力、嫌味にならない鋭いコメントで場を回す力を武器に活躍する風間と、井ノ原が開拓し歩んできた道は重なる気もする。

 と、そんなことを考えながらもふと思うのだ。明るいテイストの作品で邪気のない笑顔を見せたり、司会業やバラエティでフリートークを繰り出す姿だけでなく、そろそろ風間が魅せるダークで闇の深い演技にも触れたいな、と。

 風間俊介が多くのフィールドでさまざまな“顔”を見せられる表現者である理由。それはアイドルとしてきらびやかな舞台に立つ先輩や後輩の姿を眺めながら、外の世界で1人戦い、泣き、自分の歩む道を見極めようともがいてきたからなのかもしれない。

 今の快進撃と、あの笑顔の裏には、じつに多くの涙が隠されているはずなのだ。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

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