【ネタバレあり】『アベンジャーズ/エンドゲーム』MCU牽引してきた二大巨頭の“ヒーロー”としての歩み

『エンドゲーム』二大巨頭の“ヒーロー”としての歩み

※本記事は『アベンジャーズ/エンドゲーム』及び過去MCU作品のネタバレを含みます。

性格も強さもバラバラなヒーローたち

 マーベル・シネマティック・ユニバース。通称“MCU”と呼ばれる、映画史上まれに見る記録的ヒットを残したシリーズがこれ以上ない大成功を収めて一区切りを迎えようとしている。

 このシリーズの魅力は何か? それは伝統あるマーベル社が有する様々なコミック・ヒーローたちが同じ世界に存在していて、時には協力して戦い、時には反目し、時には誰かがいなくなって悲しむような物語を作ってきたことだろう。漫画でしかありえないようなキャラを画面上に説得力を持って再現できるだけの映像技術の発展も素晴らしい役割を果たしているが、それ以上に人間ドラマや関係性をしっかりと描く手腕を持った監督たちが、それぞれの作品を手がけ、それに実力あるキャストたちが応えてきたことが大きい。

 実は『アベンジャーズ/エンドゲーム』には終盤までド派手なアクションやスペクタクルシーンはないのだが、それでもキャラのやり取りやその他のとあるSF的なシーンを見ているだけで観客が楽しめるように作ってある。それは一朝一夕の演出ではなく、これまでのMCU21作品が積み上げてきた功績のおかげだ。

 単に強いヒーローが集まるアベンジャーズを描くための前振りとして、とりあえず各ヒーローたちの単体作を作っておく、というようなスタンスでシリーズを作っていたらここまで広がりを持った世界を描くことはできなかっただろう。それぞれにしっかりとドラマを持たせ、様々な成長を描いてきたからこそ22作目でのカタルシスが爆発しているのだ。

 今思えば各登場人物たちは人となりもヒーローになった理由もバラバラだった。

 父から引き継いだ軍需企業で自分が作ってきた兵器の悪影響を知り、自らスーツを開発してアイアンマンになった不遜な天才トニー・スターク。

 実験の失敗により感情の変化で凶暴な緑の巨人ハルクに変身してしまうようになった悲運の天才科学者ブルース・バナー。

 北欧神話の登場人物にして宇宙の遥か彼方の天界・アスガルドの王子で雷を操る神・ソー。

 第二次大戦時に米政府の実験に志願して超人兵士となり、ナチスの流れを汲む組織ヒドラ党と戦ったのち南極で氷漬けになっていた英雄キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース。

 MCU・フェーズ1は彼らの単体作が描かれた後、国際平和維持組織のS.H.I.E.L.D.のエージェントで元ソ連の凄腕スパイのブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ、同じくエージェントで驚異的な弓の名手ホークアイことクリント・バートンも加えた6人のスーパーヒーローがクロスオーバーする一大企画『アベンジャーズ』で締めくくられる。

 それぞれに性格も強さもバラバラなヒーローたちは地球の危機にニック・フューリーに召集されるもいがみ合い、なかなかまとまらない。しかし、だからこそいよいよ敵がニューヨークに攻め込んでくる終盤で結集し、それぞれの力を発揮して無敵の強さを見せるカタルシスは尋常ではなかった。

 結局のところ現状までのMCUはこの6人中心で回っている。その他のヒーローたちのクロスオーバーの物語は今後のMCUでより深く語られていくと思うので期待したい。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる