清原翔の“佇まいだけで魅せる”表現力 『なつぞら』で俳優としての真価が問われる?
そして、清原の俳優としての真価が問われるているのが『なつぞら』である。これまで彼の参加してきた作品とはまた違い、老若男女問わず幅広い世代に視聴されるのが朝ドラの魅力の一つだろう。しかし登場したはいいが、人物数の多い朝ドラでは、口数の少ないキャラクターというのは印象に残りづらい。だがこれこそ彼の得意とするところ。ファッション誌でよく見ていたからそう感じるだけなのかもしれないが、清原自身の“シティ派”な印象の強かった切れ長の目は、わだかまりを抱える照男の無粋な青年像にも見事にフィットしているように思える。さらにここ最近では、彼にフォーカスが絞られ、この“わだかまり”をこそ、清原は演技者として表現しなければならなかった。
清原が演じる柴田照男とは、幼少期の頃より、厳格な祖父・泰樹に認められることを第一義としてきたフシがある。にもかかわらず、戦災孤児のなつが柴田家にやってきたことによって、祖父の関心はなつばかりに注がれていた。それは照男が、柴田牧場の一人前の働き手となった今も変わらないようなのだ。そんななか、照男が初めて祖父に必要とされたのが、なつを十勝に、この柴田家にとどめておくために、「結婚しろ」というものである。ひょっとすると劇中に描かれていないだけで、酪農の仕事中に泰樹が照男を必要とする瞬間はあったのかもしれない。しかし実際、私たちはその光景を目にしていない。
それ以降、演じる清原が終始浮かべる苦悶の表情には胸を締め付けられる思いがした。対面するなつに向ける言葉の一つひとつには、“慎重さ”が感じられ、そのたびごとに、またも胸を痛めていた方も多いことだろう。ここでは清原の“佇まいだけで魅せる”上手さだけでなく、セリフを喋ってこその俳優としての実力も垣間見られるものとなった。なつが遭難した際は、その責任の一端が自分にあると激しく感情を露わにし、これまで多くを語らなかった者だからこそ、彼がなつを“大切な妹”として見ていることも明らかになったのである。
本作での連日の好演によって、その魅力を持続的に示すことになっている清原。金曜ドラマ『インハンド』(TBS系)の第6話にもゲスト出演するようだが、今まさに朝ドラで注目を浴びているところとあって、こちらでも大きな話題を呼びそうである。『うちの執事が言うことには』、『HiGH&LOW THE WORST』の公開も控えているが、情報開示前のさらなる映画の企画も水面下で進んでいるはず。『なつぞら』は彼の役者人生にとって、早くも大きな転機となっているのであろうし、彼を追っていくためにも、これは見逃してはならない。
■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter
■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/