『なつぞら』草刈正雄は現代版“アルムおんじ”? 頑固ジジイが内に秘める深い愛

『なつぞら』草刈正雄は“アルムおんじ”?

 泰樹は親しみやすいキャラクターではないし、柔らかな表情を見せることもなく、その厳しい口調には、娘婿の剛男もたじろいでしまうほど。だが、なつに対する泰樹の目が冷酷に映し出されたことは一度もない。たった一人で土地を開拓した泰樹だからこそ、なつの置かれている状況や彼女の孤独を誰よりも理解している。牛舎で懸命に働くなつの姿を、物陰からじっと見つめていた泰樹の目は、目の前の仕事に向き合うなつに対する慈愛に満ちていた。

 第4話で、泰樹はなつに自らが絞った牛乳でつくったアイスクリームを食べさせ、働くことについて説く。「堂々と、ここで生きろ」。その優しく、重みのある声から、泰樹が「偏屈な頑固ジジイ」ではなく「深い愛を持った人物」であることが伝わってくる。数多くの視聴者の心を魅了したこのシーンで、泰樹がなつの生き様に影響を与える人物となったのは確かだ。

 泰樹は頑固な人物だが、なつとの出会いがきっかけで少しずつ変わっていく。もしかすると今後草刈のお茶目な演技によって柔らかな表情の泰樹も見れるかもしれない。なお公式サイトに掲載のインタビューによると、今作には『真田丸』を少し意識した“遊び”が散りばめられているというので、草刈の演技や発せられる台詞には今後も目を離さずにはいられなさそうだ。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

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