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宮崎駿監督作品からの影響も? 『移動都市/モータル・エンジン』に隠されたテーマ

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 超巨大な車体に、街が丸ごと乗っている「移動都市」が無数に存在する未来。大地を駆け抜け、大きな都市が小さな都市を追いつめて“喰らう”という、狂気をはらんだ弱肉強食の世界が描かれる奇想天外な映画が、『移動都市/モータル・エンジン』である。

 製作は、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソン。彼の作品とともにCGアニメーション、VFX技術を高め、『キング・コング』(2005年)や『ホビット』シリーズ、さらに『アバター』(2009年)や『アクアマン』(2018年)そして『アリータ:バトル・エンジェル』(2019年)など、ハリウッド映画の最前線で活躍するWETAデジタルが、映像化困難な本作のアクションに現実感を与えている。

 たしかに、この大スケールの映像には圧倒され、興奮させられる。しかし、このような荒唐無稽な世界は、一体何を表しているのだろうか。ここでは、本作『移動都市/モータル・エンジン』に隠されたテーマについて深く考えていきたい。

 地球規模の威力を備えた量子エネルギー兵器の使用によって地殻が破壊され、たった1時間あまりで、それまでの文明社会が破壊し尽くされた“60分戦争”。生き残った者たちは“ノマド”(放浪民)として、エンジンと車輪で移動しながら生活するようになる。

 そして、群雄割拠の車たちの戦いと略奪の果てに、吸収・巨大化を繰り返したモンスター級の移動都市が生まれる。幅1.5km、奥行き2.5km規模の“ロンドン”である。その構造は七層に分けられていて、奴隷労働者や身分の低い市民は、下の階層で厳しい労働を余儀なくされる。“ロンドン”は分厚い装甲に守られ、超巨大な車輪とキャタピラーであらゆるものを蹂躙し、小さな規模の移動都市を捕獲しては規模を拡大していき、東に住む異民族の街を侵略しようとすらする。

 ここで印象付けられるのは、その巨大なエンジンを回し車輪を駆動し続けながら移動するというシステムを維持するための、圧倒的なエネルギーの浪費だ。巨大化すればするほど、より多くの資源や資材、人員を必要とし、それらをまた維持するために略奪を繰り返すという、終わりなき巨大化と消費活動……。そしてついには、さらなる欲望によって、人間はまたしても自らを滅ぼす禁断の力に近づいていく。旧約聖書の『創世記』に記された罪の街である「ソドム」や、神に挑戦しようとした「バベルの塔」を想起させるように、繁栄を続ける“ロンドン”には、常に不吉な未来への予感がつきまとっている。

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