『君は月夜に光り輝く』で北村匠海が“死”と向き合う 映画でこそ新たな価値を得た恋物語に
姉の「死」をきっかけに、「死」に魅せられたひとりの少年が、「死」を目前とした少女と出会うーーこれは、小説『君は月夜に光り輝く』の筋書きであるが、同名タイトルで映画化された本作は、原作とはずいぶんと異なった読後感をもたらす。
本作でメガホンを取ったのは、難病を抱えた少女と、その彼女に翻弄される少年の交流を描いた本作と近い構造を持つ、『君の膵臓をたべたい』(2017)の月川翔だ。そして同作に続き、北村匠海が翻弄される少年を演じ、今作では永野芽郁が余命いくばくもないヒロインに扮している。
小説を映画化するにあたって、改変や省略などの脚色が施されるのはとうぜんのことだ。その中で、原作を忠実になぞっているかどうかの“再現度”や、脚色によって一本の映画作品として自立しているのかどうかが、原作モノ映画の多くの場合の評価基準となるだろう。しかし本作では、原作にあったいくつもの重要なシーン(要素)が描かれておらず、どうにも釈然としない。その結果、主題が変わっているように感じるのだ。
ヒロイン・渡良瀬まみず(永野)が患っているのは、「発光病」という、この物語内にだけ存在する不治の病だ。これを患うと、細胞異常により皮膚が発光し、死期が近づくにつれてその光は強くなるのだという。彼女はすでに“余命ゼロ”であり、いつその輝きが絶えてもおかしくはない。そんな彼女と出会った少年・岡田卓也(北村)が、まみずがノートに記した“死ぬまでにやりたいこと”を代行していくというのが本作の柱だ。