『女王の教室』から『ハケン占い師アタル』へ 遊川和彦が“会社”を舞台に描いた時代の変化

遊川和彦が会社舞台に描いた『ハケン占い師アタル』

 『ハケン占い師アタル』に登場する会社員の名字には目黒や品川といった山手線の駅名からとられているのだが、まるで駅に止まるように、毎話、一人の社員に焦点を当てて、彼、彼女らの抱えている問題を掘り下げていく。

 1~3話では、経験不足から生まれる若手社員の抱える問題を描かれていたが、第4話では上司の上野に焦点が当てられた。過去の成功体験を絶対化するあまり、部下に対して上から目線で振る舞うがゆえに、どんどん孤立していく上野。前回まで「これだから若いやつは」と思っていたら、今度はベテランが抱える問題が辛辣に描かれるのだ。

『ハケン占い師アタル』第4話より(c)テレビ朝日

 この巧みな構成によって、単純な若者批判やおじさん批判で終わらず、どの立場の人にも響く作りとなっている。この視点の多様さこそが本作最大の魅力だ。現代の会社には様々な問題が渦巻いており、そこに集う人々は年齢も性別も立場も目的もバラバラだ。だからこそ様々な問題が露呈しつつあるのだが、本作は、その問題のひとつひとつと向き合うことで、今の時代ならではのドラマとなっている。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:杉咲花、小澤征悦、志田未来、間宮祥太朗、志尊淳、野波麻帆、板谷由夏、若村麻由美、及川光博
脚本:遊川和彦
音楽:平井真美子
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、山川秀樹(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)、田上リサ(5年D組)
演出:遊川和彦、日暮謙(5年D組)、伊藤彰記(5年D組)
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日

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