『女王の教室』から『ハケン占い師アタル』へ 遊川和彦が“会社”を舞台に描いた時代の変化

遊川和彦が会社舞台に描いた『ハケン占い師アタル』

 脚本を担当するのは遊川和彦。『家政婦のミタ』や『過保護のカホコ』(ともに日本テレビ系)などで知られる脚本家で、今作では演出も担当している。遊川の作風は時代ごとに変遷しているのだが、強烈な作家性を発揮するようになったのは学園ドラマ『女王の教室』(日本テレビ系)からだろう。小学校を舞台に謎の女教師と生徒たちの戦いを描いた本作は、『ハケン占い師アタル』に出演している志田未来の出世作でもあり、劇中の名前は本作の神田和実と一字違いの神田和美だった。

『ハケン占い師アタル』第1話より(c)テレビ朝日

 放送当時(2005年)小学生だった子が、社会人になるくらい時間が経ったと考えると感慨深いものがあるが、当時は学園ドラマが全盛で、『ドラゴン桜』(TBS系)や『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)のように、学園ドラマという枠組みを通して、グローバリズムに直面して格差社会となった日本でどう生きるのか? という同時代的なテーマを描いたものが多かった。

 90年代にバブルが崩壊し、年功序列・終身雇用を背景とした昭和的な会社の形態がどんどん保てなくなり、不況のため新卒採用も抑えられる。やがて、00年代になると自由競争の波が押し寄せ、一億総中流という幻想が崩壊し、本格的に格差社会が到来する。雇用はますます流動化し、会社は正社員と派遣社員が一つの職場で働く、目的も役割もバラバラで掴みどころのない場所となっていった。

『ハケン占い師アタル』第5話より(c)テレビ朝日

 そのため、共同体としての会社が希薄化していき、警察や病院を舞台にしないと、組織で働くということが描けなくなっていた。同時にドラマに求められるリアリティの水準も年々上昇し、昔のトレンディドラマのような何の仕事をしているのかわからない、恋愛の舞台としての会社というものは、年々機能しなくなっていった。

 そんな風に会社組織が流動化して不安定な時代だったからこそ『女王の教室』は学校が舞台であり、遊川の代表作とされる2010年代の作品は家族が物語の中心に添えられていたのだが、『ハケン占い師アタル』では、家族は背景に退き、舞台は“会社”で、チームで“働く”ということと真摯に向き合っている。ここに時代の変化を感じる。

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