『トレース~科捜研の男~』船越英一郎の“熱血演技”に隠された意図 新章で錦戸亮との関係も変化?

『トレース』船越英一郎の演技に注目

 "2時間ドラマの帝王"や“サスペンスドラマの帝王“の異名を持つ船越英一郎が、初の月9ドラマとなる『トレース~科捜研の男~』(フジテレビ)で堅物のベテラン刑事役で出演している。その乱暴な振る舞いや出で立ちの演技で話題となっているが、それには演出における深い理由があった。

 このドラマは、関ジャニ∞の錦戸亮演じる法医研究員・真野礼二が、「鑑定結果こそ真実だ」という信念のもと、他人とは違う視点で、事件の真実に迫っていく物語。そんな事件を科学的に理詰めていく真野の対照的な存在なのが、船越演じる警視庁捜査一課の刑事・虎丸良平だ。定年間近の、いわゆる昔気質の堅物なベテラン刑事で、長年培ってきた”刑事の勘”に自負があり、直感的に行動に移すタイプ。故に、冷静な真野の推測には「小僧!」と言って聞く耳を持たない。虎丸がいるからこそ、真野の洞察力の鋭さから真相へ導く構造が出来上がり、物語を面白くしていくのだ。

 2時間ドラマの帝王である船越が「これまで僕が演じてきた"熱血漢"という系譜の集大成」と自負するほど、本作ではその怒鳴り散らす熱い演技がさらに加速しているのだ。

 この虎丸の反響について『トレース~科捜研の男~』の監督である松山博昭がスポニチのインタビュー(2019年1月21日)(参照:https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2019/01/21/kiji/20190120s00041000510000c.html)で「狙い通りと言えるのではないでしょうか。虎丸は自分がパワハラをしているという感覚が欠如し、実は繊細で弱くて人にナメられたくないから、声を荒らげて自分の弱さをごまかしたいという人なんです。科捜研に対するアンチという存在で、誰だろうとオレの言うことを聞けという理不尽さも。だから、もし船越さんの演技がそのように議論を巻き起こしているということでしたら、それはまさに狙い通りなのです」と語っている。

 船越は虎丸について「自分の未来がしっかり見えた中で、そこまでキャリアを積んできた刑事はいったい何を考え、何を感じ、何を思うだろうと、同世代の方に感じられるような、そういう匂いを出せるような刑事像を作っていきたい」と公式動画インタビューで語っていたが、その演技には、定年間近の焦りを隠そうと高圧になる、その余裕のなさが表現されている。おそらく真野たちの意見を認めてしまうと、長年培ってきた刑事としてプライドが崩壊してしまうのではないか。船越は、そういった虎丸という人物を作品を通して導き出したのかもしれない。

 しかしそれは、こらから物語が展開していくための、前振りでもある。

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