まさにエンターテインメントの満漢全席! テンコ盛りだけど分かりやすい『アクアマン』の面白さ

『アクアマン』はテンコ盛りで分かりやすい

 テンコ盛りと分かりやすさ。この2点を踏まえた上での、お客さんに楽しんでいただく精神。思い返してみれば、彼のこういったスタイルはデビュー作の『ソウ』からも見て取れる。「目が覚めたら明らかにヤバい便所に閉じ込められていた!」という分かりやすい掴みと、密室劇だけでは終わらせず、別軸で殺人鬼ジグソウを追う刑事ドラマも進行させていた。直近でも『死霊館 エンフィールド事件』(2016年)で主な舞台となる“呪われた家”以外に、“呪いの人形アナベル”“悪魔のシスター”“へそ曲がり男”など、次々と主役級の濃いキャラクターを登場させている(そして実際にスピンオフで主役になっている)。

 『アクアマン』では、こういったテンコ盛り傾向もパワーアップ。時にジャンルすら横断していく。底抜け痛快野郎の英雄譚、壮絶な格闘アクションのつるべ打ち、シェイクスピア風の宮廷陰謀劇と兄弟の愛憎、世界を巡ってのラブコメディ、異なる世界に生きる一組の男女の悲恋の物語、海底で繰り広げられる大戦争、景気よく鳴り響くピットブル……これだけテンコ盛りな上に、一切話が渋滞せずに流れてゆく。そして何より面白い。まさにエンターテインメントの満漢全席。こういう映画は大きな画面と、大きな音で観るのが一番だ。今もっとも劇場で観るのをオススメしたい一本だ。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『アクアマン』
全国公開中
監督:ジェームズ・ワン
出演:ジェイソン・モモア、アンバー・ハード、ニコール・キッドマンほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved” “TM & (c)DC Comics”
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/aquaman/

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