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現在の社会状況をも浮かび上がらせるユニークな視点 『フロントランナー』が描いた重要な問題

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 政治家のプライベートなスキャンダルは、果たしてどの程度まで追いかけ、報道するべきなのか?

 時は1988年。ジョン・F・ケネディの再来と言われ、史上最年少の46歳で大統領候補になった、実在の政治家ゲイリー・ハートは、その見事な話術とカリスマ性で、民主党・大統領候補のトップを走る「フロントランナー」となった。しかし、“ある疑惑”が報じられたことで、彼は勝利を目の前にして窮地に陥ることになる。

 実話を基にした本作『フロントランナー』は、当時の政治家と国民、そしてメディアとの関係から生まれる問題に一石を投じながら、現在の社会状況をも浮かび上がらせるユニークな視点を持った作品だ。そしてその問題は、アメリカだけでなく日本を含めた世界の国々にも共通する点が多い。ここでは、そんな本作が描いた重要な問題を読み解いていきたい。

 映画俳優出身でタカ派の大統領ロナルド・レーガンの任期中、次期大統領の候補として人気があったのが、ゲイリー・ハートだった。彼は出馬表明をする際に、記者たちとともにわざわざグランドキャニオンの山に登って演説を行ったり、進歩的な政策を多くの人に分かりやすいように要約するなど、国民の欲するものを十分に理解していた。

 ハートを演じるのはヒュー・ジャックマンだ。彼は『LOGAN/ローガン』では年をとって傷つき弱っていくヒーローを演じていたが、大統領選の候補を演じさせれば、まだまだ若手である。本作では対照的に、選挙演説などで精力的に若さをアピールしているところが面白い。

 各地でのパフォーマンスをこなし、フロントランナーとして万事順調に大統領への道をひた走るハートだったが、ただ一つのスキャンダルが選挙選の趨勢を一気に変化させてしまうことになる。それは、ハートの不倫報道だった。本作は、この不倫問題を中心に、ハートの家庭、選挙事務所、報道機関の人々のドラマを描いていく。

 本作のジェイソン・ライトマン監督は、『マイレージ、マイライフ』(2009年)、『ヤング≒アダルト』(2011年)などコメディーの印象が強く、政治的な実話を映画化したのは今回が初めてだが、彼の映画には社会的な問題が根底に流れていることが多い。さらに『フロントランナー』は、騒動に翻弄され狼狽する人々を俯瞰して描いているという意味では、コメディーとして見ることもできる。そういった事情を考えるとジェイソン・ライトマン監督は適任だといえる。しかし彼は今回、コメディーとしての色を抑え、予想以上に重厚なバランスで演出を行っている。それは本作に存在する問題が、笑えないほどシリアスな部分を持っていたからではないだろうか。

 国民から愛されたジョン・F・ケネディは、映画スターのマリリン・モンローなど、多くの女性と不倫関係にあった。だが当時の報道機関は、政治家のプライベートを暴くことについて一定の自制があり、このようなセンセーショナルな扱いはされていなかった。その頃であれば、ハートの行為も黙認されていたに違いない。そのような“紳士協定”が通用しなくなってきたのが、この1988年だったのだ。

      

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