大谷亮平演じる真一の再婚が意味するもの 内田有紀は『まんぷく』を見守り続ける
結核で亡くなってからも、福子(安藤サクラ)や鈴(松坂慶子)の夢枕に立つ形で登場し続けるのが、咲(内田有紀)である。夢に出てくる彼女はいつも、福子や鈴にちょっとした意見を言ってくれるだけに、本作中で重要な役割を果たしてきた。咲と真一(大谷亮平)の結婚式で福子が言っていたように、今井家の父親代わりになり、自分のことを後回しにして家族を支えてきた咲。陰に陽にみんなの面倒を見てくれた彼女の役割は、生前からずっと変わらないのだ。
今週の『まんぷく』(NHK総合)では、そんな咲と結ばれていた真一が新たな婚約者・好美(東風万智子)を連れてきた。とはいえ、彼女のキャラクターは咲とは異なり、比較的陽気な性格で、よくしゃべる女性。福子が当初驚いていたのも無理はない。ただ、子どものいたずらの話を福子に聞かせる好美の横で、真一は終始笑顔で、心の底から彼女を気に入っているようだった。
思えば真一自身の性格も、本作に登場した当初とは幾分変化を見せている。初期の真一はどこか堅いイメージを漂わせており、真一と顔を合わせたばかりの鈴は、彼のことを「ちょっと冷たそうに見えるのよね」と評していた。もちろん決して真一は冷たい性格なんかではなく、実直で、誠実で、ただひたむきに咲のことを愛し続けるタイプの男性であったことは言うまでもない。
そんな真一の性格が、周囲も気づくくらいに変わったのは終戦後のことである。それまでの堅い雰囲気が薄れ、表情に明るさが増すようになったのだ。第30話で、「真一さん、まるで人が変わったみたいに明るいから。あなたも見てきたんですね。地獄を」と言う忠彦(要潤)に対し、真一が「忠彦さんも」と返すシーンがあった。戦地で過酷な経験をしてきた2人。真一は性格に変化を見せ、忠彦は画風を一変させるようになったのだった。