滝沢秀明は常に“等身大”の俳優だったーー最後の主演ドラマ『孤高のメス』を機にキャリアを振り返る

滝沢秀明の俳優キャリアを振り返る

 数ある舞台の中でも『滝沢歌舞伎』は、彼の集大成とも呼べる作品だ。力強く、時に美しくもある舞台演技はもちろん、徐々に演出やプロデュース業にもこだわり始めていく。同作品を観ていると、出演者一人ひとりの演技という部分よりも、舞台構成や「次は何が起きるのか」というワクワク感が印象的なのである。これこそがプロデューサー・滝沢秀明の原点となっているのだろう。

 滝沢の役者活動を振り返ってみると、演じた役たちは滝沢の等身大であったように感じ
る。デビュー当時の初々しさ、少し背伸びした少年らしさ、順風満帆だからこそ表現でき
る真っ直ぐさ・明るさ、そして裏方への興味……。役者として無理やり役を作り込むので
はなく、“その時の滝沢”が役に投影されていたのかもしれない。

 そんな滝沢にとって最後の主演ドラマとなるのが、1月13日から放送スタートした『孤高のメス』(WOWOW)だ。滝沢が演じるのは、「患者を救う」という信念を持ち続ける一本筋の通った外科医の当麻鉄彦。確固たるスキルと人間性を持つ当麻の前には、権力や古い慣習が立ちはだかるが、信念を曲げずに立ち向かっていく。この姿は、多くの人に求められ続けているにもかかわらず潔く表舞台を降り、裏方に回った滝沢の姿に通じるところがある。ブレない芯を持つ滝沢は、役者として最後にどんな演技を見せてくれるのだろうか。『孤高のメス』最終回まで、引き続き見守っていきたい。

(文=高橋梓)

■放送情報
『連続ドラマW 孤高のメス』
WOWOWプライムにて、毎週日曜22:00〜放送中(全8話)
出演:滝沢秀明、仲村トオル、工藤阿須加、山本美月、石丸幹二、長塚京三、宮川一朗太、利重剛、三浦誠己、近藤公園、六平直政、本田博太郎、キムラ緑子ほか
原作:大鐘稔彦『孤高のメス─外科医当麻鉄彦─』(幻冬舎文庫)
脚本:前川洋一
監督:内片輝
音楽:羽岡佳
公式サイト:http://www.wowow.co.jp/dramaw/kokou/

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