2018年に“納得”できる形で成立 『アリー/ スター誕生』ブラッドリー・クーパーの堅実な手腕

『アリー/ スター誕生』B・クーパーの手腕

 ところが、この映画はアリーがジャクソンを見捨てない(見捨てられない)のが納得できるように、丁寧に2人の人間性を描いていく。スーパーマーケットの駐車場という多くの観客が身近に感じる舞台に、2人が有名人/一般人の垣根を超えて、音楽について本音で語り合うシーンや、ジャクソンがアリーを舞台に上がらせ、2人の力で大勢の観客を沸かせるシーンなど、アリーにとってジャクソンが人生のキーパーソンであることが非常にじっくりと描かれていく。その一方で、“決定的なやらかし”の後に涙ながらに懺悔するジャクソンなど、観客に「彼も悪い人ではない」と思わせるシーンも忘れない。ブレイクした途端にアリーの音楽性が変わり過ぎでは? とも思ったが、テイラー・スウィフトという実例を考えれば、ない話ではない。前述の駐車場や、こじんまりとした家など、派手になりすぎない、地味とも言える画面の連続で、2人のドラマを身近な出来事のように感じさせ、「こういうズルズルと関係が続いてしまうパターン、ダメなやつだけど、あるよね……」と観客を納得させてしまう。そして観客が存分に2人を身近に感じたとき、物語は悲劇と、全てを総括するアリーの熱唱で幕を閉じる。

 本作の大黒柱はレディ・ガガーというスターだ。しかし、本作を1937年のオリジナルを超える領域まで高めているのは、監督・主演のブラッドリー・クーパーの堅実な手腕である。2018年に作る『スター誕生』として、レディー・ガガの音楽映画として、両方の面で理想的な形だと言えるだろう。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『アリー/ スター誕生』
全国公開中
監督・製作:ブラッドリー・クーパー
出演:レディー・ガガ、ブラッドリー・クーパー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/starisborn/

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