『真っ赤な星』桜井ユキ×井樫彩監督対談 「私の中から生まれてくるものを出し切った」
井樫彩監督の初長編映画となる『真っ赤な星』が本日12月1日より公開となる。井樫監督は、前作『溶ける』が第70回カンヌ国際映画祭シネフォンダシオンに正式出品されるなど、国内外で注目を集めている新鋭。本作では、学校にも家にも居場所がない14歳の少女・陽と、体を売って生計を立てる27歳の元看護師の女性・弥生の、交わることのない愛の日々が描かれる。
リアルサウンド映画部では、本作で日本人史上最年少でのレインダンス映画祭のコンペティション部門出品も果たした井樫監督と、弥生を演じた桜井ユキにインタビュー。本作製作のきっかけから、「映画が完成しないかもしれない」とまで思ったという撮影での苦労、今後の展望まで話を聞いた。
桜井「弥生という役を生き抜きたい」
ーー撮影を終えてみて、上映が近づくいまの心境はいかがですか?
井樫彩(以下、井樫):今まで自分の映画が上映されることについて、「観てくれたら嬉しい」くらいの気持ちだったんですけど、今回は必死です(笑)。
桜井ユキ(以下、桜井):撮影ではいろんなことがあって。映画って撮影がスタートしたら、撮り終わるものという前提で取り組みますが、「完成しないかもしれない」ということが本当に起こった時、弥生という役を生き抜きたいという思いが強く湧きました。だから、完成してこうして皆さんの元に届けられることは奇跡だなと思って、本当に感慨深いです。
ーー井樫監督が初長編となる本作の製作に取り組むきっかけは?
井樫:当時、多分今となっては好きだったんだろうなと思う子がいて、その子と岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』の話をしたんです。作品の主人公である2人が、この人のためなら死ねる、お互い唯一の存在であるという関係なんですけど、そういう関係は、現実世界にもあり得るのかという話をして。その話をしている時点で、「あり得ない」という前提が2人の間にあって、その子のことを好きだと思っていたけど、根本的に深いところでは全然繋がっていなかったんだと気付きました。この気持ちを映画にしようと考えていた時に、私が小学生の頃、入院した時に憧れの看護師さんがいて、その看護師さんに泣かれたことをふと思い出したんです。だから最初のシーンはリアルに体験したようなことなんですよね。その幼い頃の自分の体験と、大人になって感じた気持ちという2つの要素を合わせて映画を作ってみようと思い、作り始めました。
ーー桜井さんは、そういった井樫監督のエピソードをオーディションを受ける段階で聞いていたんですか?
桜井:いえ。オーディションを受ける時は、役柄が書いてあるプロットを渡されただけでした。なので、脚本を読ませていただいたのは決まってからなんです。
ーー最初、脚本を読んだ時の感想は?
桜井:まず、プロットを読んだ段階で深みと奥行きのあるストーリーになるんだろうなとは思っていたんですけど、できあがった脚本を読んだら、予想していたものをはるかに超えていて。最初に台本を読んだ時って、生身の人間がいるわけじゃないので、漠然と感じることが多いんですけど、『真っ赤な星』は台本の段階で血が通っている感じがすごく新鮮でしたし、そこで一気にスイッチが入りました。