『大恋愛』戸田恵梨香が演じるのはただの“悲劇のヒロイン”ではない 感情表現の豊かさに注目
現在放送中のTBS系連続ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』で、若年性アルツハイマーにおかされていく女医・北澤尚を演じている戸田恵梨香。難病ものの恋愛物語ということで、ある程度終着点が想像できつつも、ムロツヨシ演じる小説家・間宮真司との恋愛模様は多くの人の共感を呼んでいる。そこには“悲劇のヒロイン”という立ち位置で悲しみや憂いを纏いつつも、それを凌駕するだけのポジティブさで、見ている人に希望や未来を感じさせるからだろう。戸田の喜怒哀楽の表情が素晴らしいのだ。
本作の脚本を務める大石静は、ドラマ放送前の試写会の席で、自身が務めたNHKの連続テレビ小説『オードリー』に戸田が、大竹しのぶ扮する滝乃の幼少時代を演じていたことに触れると「名前まで覚えていませんでしたが、とてもうまい子だなと思った」と小学生だった戸田の演技に見入っていたと語っていた。
以前から注目していた女優とのタッグを喜んでいた大石だったが、戸田にとっては相当な難役だったという。試写会で戸田は「演じていて感情のコントロールが難しい。泣いてはいけないところで涙が出てしまう」と語っているように、演じているというよりは尚として生きているという感覚なのだろう。
戸田といえば、今年30歳を迎えたが、前述したように小学生からドラマの出演があるなど、女優としてのキャリアは長い。大石が語っているように“芝居のうまさ”には定評があり、木村拓哉主演のドラマ『エンジン』(2005年、フジテレビ系)では、養護施設に入所した女子高生を好演。この養護施設のメンバーには上野樹里、夏帆、石田法嗣、 有岡大貴、中島裕翔など現在も活躍している俳優たちが顔を揃えていたが、戸田の愛に飢えた儚げな表情をした女の子は目を引いた。
一方で『野ブタ。をプロデュース』(2005年、日本テレビ系)の上原まり子では清純な黒髪ロング、映画『デスノート』シリーズ(2006年~)のミサミサ(弥海砂)ではツインテールを披露し“美少女ぶり”を思う存分見せつける。確かな演技力と、ビジュアルの可憐さは大きな話題となり映画・ドラマへの出演が相次いだが、ここでも戸田は、恋愛もののヒロイン一辺倒ではなく、さまざまな役柄に挑んでいた。『ギャルサー』(2006年、日本テレビ系)で極貧ギャルを演じたと思えば、『花より男子2』(2007年、TBS系)では、スポット参戦ながら道明寺の気を引こうと嘘をつく女の子らしい女の子・中島海を好演。