毎熊克哉、藤原季節、タモト清嵐……映画界に欠かせぬ存在たち、『止め俺』俳優に注目!
タモト清嵐
そして秋山道男に扮したタモト清嵐は、幼少期の頃より役者の道を歩んできた存在で、ドラマに映画にと出演作が多い。『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008)など若松組に参加経験のある彼は、本作でも映画の冒頭から登場し、物語を駆動させる大役を担っている。撮影助手の高間賢治役に配された伊島空は、今夏封切られた瀬々敬久監督の力作『菊とギロチン』にも出演した新人俳優。新人にしてこの手の作品に共通して顔を見せているあたり、今後の映画界での活躍が楽しみである。城山羊の会『埋める女』で初舞台も踏むようだ。
斎藤博役に扮したのは、松尾スズキ率いる劇団・大人計画に所属の上川周作。現在は大河ドラマ『西郷どん』(NHK)で主人公の弟を演じており、注目度も上がりつつある。今後のエンタメ界を盛り上げる存在として大いに期待してしまう。さらに、映画『スクラップスクラッパー』で主役の一人を演じ、『ニワトリ★スター』などにも出演の女優・中澤梓佐が扮したのは、門脇麦演じる主人公・吉積めぐみの良き相談者でもある篠原美枝子。バイタリティー溢れる女性像を体現しつつ、映画で世界に立ち向かう烏合の衆に、彼女は華を添えている。そして福間健二役の外山将平もまた、まだ新人俳優に類される存在だ。出演作は多くはないが、今回の好演をきっかけにさらなる道が開けそうである。
登場人物はみな実在する若松プロの関係者なのだが、若き日の彼らを演じる俳優一人ひとりの放つ熱量が、そのまま本作の熱量として結晶している。ここではごく少数の者にしか触れられなかったが、昨年の公開作『獣道』や、先述した『菊とギロチン』などの話題作にも、ごくごく小さな規模の映画から叩き上げでやってきた、作品を支える俳優たちが多く登場している。
さらに今年は社会現象をも巻き起こした、“新人監督×無名の俳優達が放つスーパー娯楽作!”と銘打たれた『カメラを止めるな!』が、いまだに観客動員数を伸ばし続けている。もちろん、映画の構造そのものに対する評価でもあるのだろうが、その構造を支えている俳優たち一人ひとりを抜きにしては語れない。本作を契機に彼らは大きな注目を浴び、主演・濱津隆之の月9ドラマ『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)出演などをはじめ、その多くが地上波作品にも顔を見せるようになった。
華やかな映画の世界ではあるが、俳優誰しもに下積みの時代がある。叩き上げでやってきている彼らこそが、映画のパワーの源だ。彼らをいち早く見つけて追いかけていくことも、映画の楽しみ方のひとつになるのではないだろうか。
■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。
■公開情報
『止められるか、俺たちを』
新宿ほかにて公開中
出演:門脇麦、井浦新、山本浩司、岡部尚、大西信満、タモト清嵐、毎熊克哉、伊島空、外山将平、藤原季節、上川周作、中澤梓佐、満島真之介、渋川清彦、音尾琢真、高岡蒼佑、高良健吾、寺島しのぶ、奥田瑛二
監督:白石和彌
製作:尾﨑宗子
プロデューサー:大日方教史、大友麻子
脚本:井上淳一
音楽:曽我部恵一
製作:若松プロダクション、スコーレ、ハイクロスシネマトグラフィ
配給:スコーレ
(c)2018若松プロダクション
公式サイト:www.tomeore.com