ハリウッド大作で相次ぐ監督降板にある背景は? 「クリエイティブ上の意見の相違」について考える

ハリウッドで相次ぐ監督降板を考える

 今年8月21日、多数のアメリカの映画業界紙が、『007』シリーズ新作の監督に決まっていたダニー・ボイルの降板を報じた。それからちょうど1ヶ月後の9月20日、『ビースト・オブ・ノー・ネーション』(2015年、Netflix)で知られるキャリー・ジョージ・フクナガがそのポストを引き継ぐことが発表された。現在Netflixで配信中の『マニアック』(2018年)の監督も努めるフクナガは、現在ハリウッドでもっとも注目されている監督の一人と言っても過言ではないが、そんな彼も実は昨年ワーナー・ブラザースより公開されたスティーヴン・キング原作のホラー『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年公開)の監督を2015年に降板している。また、今年6月に公開された『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』も、フィル・ロードとクリス・ミラーによる共同監督から、ロン・ハワードへと交代し、再撮影を行っている。ハリウッドきってのビッグフランチャイズでの監督降板が相次いだ形であるが、最近の、ハリウッド大作からの監督の降板は、この2作だけではない。

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(c)2016 & TM Lucusfilm Ltd. All Rights Reserved.

 アメリカのエンターテインメント情報サイトのVultureは、昨年12月に「2017年は映画監督交代の年」と題された記事を出した。記事中で挙げられている通り、確かに9月には『スター・ウォーズ エピソード9』からコリン・トレボロウが去り(新しい監督は2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を手がけたJ・J・エイブラムス)、さらには、イギリスの世界的ロックバンドQueenとそのフロントマン、フレディ・マーキュリーを描いた伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年11月9日日本公開予定)も、ブライアン・シンガー監督の降板があった。

『ワンダーウーマン』(c)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

 加えて2018年も含めた前後の数年を見ると、例えば現在製作中のサンドボックスゲーム『Minecraft』の実写化映画ではロブ・マケルヘニーが降板した。DCユニバースの『フラッシュ』では、セス・グレアム=スミスから『DOPE/ドープ!!』(2015年)で大きな注目を浴びたリック・ファムイーワに、そこからさらに、ジョン・フランシス・デイリーとジョナサン・ゴールドスタインの共同監督へと交代になった。全世界で大成功を納めた『ワンダーウーマン』(2017年)も、ミシェル・マクラーレンが降板してパティ・ジェンキンスに決まったという経緯がある。

『ボヘミアン・ラプソディ』(c)2018 Twentieth Century Fox

 上に挙げただけでも、ここ数年のビッグタイトルでのハリウッドでの監督降板の多さが伝わったことと思うが、監督の降板自体は、ハリウッドでは昔から珍しいことではなかった。1939年に公開された『オズの魔法使い』では、撮影開始から2週間でリチャード・ソープが解雇され、さらにジョージ・キューカー、ヴィクター・フレミングと監督が代わり、最終的にはキング・ヴィダーが映画を完成させた。また、『風と共に去りぬ』も、『オズ~』と全く同じジョージ・キューカーから、ヴィクター・フレミングへと変わっている。ただ、上であげたような近年の作品で際立つのは、その多くがワーナー・ブラザース、ソニー、FOX、ディズニーなど、メジャースタジオによる作品であり、とりわけ『スター・ウォーズ』や「DCユニバース」といったスタジオの稼ぎ頭のフランチャイズである。また『ボヘミアン・ラプソディ』のように、11月というアカデミー賞を控えたアワードシーズンでの公開に合わせた作品もある。

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