小西真奈美、“全身緑色”のキャラを成立させた演技力 『半分、青い。』は脇役の個性が魅力に

小西真奈美、“全身緑色”を成立させた演技力

 自身の大好きなものを突き詰め、説得力のある言動が魅力的な彼女だが、ゆるやかな見た目に合った一面も持ち合わせている。兄・津曲雅彦(有田哲平)に対する態度だ。小西の津曲に対する演技は、家族にだけ見せる厳しさと優しさに満ちている。津曲は、鈴愛とともにヒット商品を売り出すも、大コケした商品で多額の負債を抱え、それを鈴愛に丸投げして逃げ出した過去がある。恵子とは対照的に胡散臭さ満点のキャラクターなのだが、恵子は決してそんな兄を突き放そうとはしない。兄が曲がったことをすれば、正面から厳しく意見するが、常に兄を愛おしく憎めないといった空気を醸し出している。だからこそ津曲は、はっきりと意見を述べる妹にタジタジしながらも、厳しくも優しい妹を信頼し、息子・修次郎(荒木飛羽)との関係や仕事に対する弱音を吐けるのだろう。

 この兄弟の関係性は、商品開発や鈴愛と律の想いが通じた瞬間など、物語が大きく動く瞬間の合間合間に描かれていた。物語の箸休め的な存在だが、描かれるシーンが短くとも2人からは常に“兄妹らしさ”が漂っている。お調子者の兄としっかり者の妹というよくある構図ではあるものの、鈴愛や律の商品開発に大きな影響を与えているのは確かだ。鈴愛と律の開発現場に呼ばれた2人が、各々の得意分野を存分に発揮してくれたからこそ「そよ風扇風機」のお披露目会を開くことができたのではないだろうか。

 最終週までに何人もの個性的すぎる脇役が登場してきたが、彼らが物語を破綻させることはなかった。「再起奮闘編」で登場した恵子も、「全身緑色」「アニメ声」というキャラクターでありながら、小西の演技とその他のキャラクターとの絶妙な距離感によって、物語にアクセントと説得力を添えた。『半分、青い。』が視聴者を魅了してやまないのは、個性豊かなキャラクターを演じる役者陣の、確かな演技力のおかげとも言えるだろう。

 第25週の最後、「そよ風扇風機」のお披露目会のシーンで東日本大震災が描かれた。シリアスな展開ゆえ、最終週に不安を感じる視聴者も少なくないはずだ。脚本家・北川悦吏子氏による今作のストーリー展開は、度々SNS上で賛否両論を巻き起こしているが、個性豊かなキャラクターの姿を忘れてはならない。彼らの活躍によってどのように物語が終幕するのだろうか。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/奈緒、矢本悠馬、石橋静河、余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊、上村海成/清野菜名、志尊淳、山崎莉里那、小西真奈美
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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