綾瀬はるかと佐藤健の物語はどう築かれていく? 『義母と娘のブルース』第1章から第2章へ
こうしてみると、第1章と第2章は、“奇跡”のタイプが違う。4つ葉のクローバー、数字の繋がりなど、第1章の奇跡は、些細な偶然によるものが多かった。だが、第2章における奇跡は、大樹も章も亜希子もみゆきも、誰かの人生を垣間見ることで起こる、あるいは人と人が出会うことで起こる “奇跡”が多い。
その奇跡は、受け取りようだ。「もう1人の宮本みゆき」をみゆきは最初羨むが、大樹の「俺はこっちのみゆきちゃんがいいけど」というストレートな言葉と、亜希子との和解により、彼女は翌日心の中で「はじめまして、私も宮本みゆきです」と微笑みかける。
亜希子もみゆきも、そして章も、全く別のタイプの愛すべき人々が不器用ながら、回り道しながらも必死で生きる物語は、誰かにとっての奇跡になり得る。それが第2章なのだろう。
そして、自転車の存在を忘れてはならない。それだけで第1章と第2章のスピード感、距離感が変わってくる。このドラマは、家の中、職場の中の話だけでなく、路地でのやりとりが魅力だ。第1章で自転車にうまく乗れなかったから乗っていなかったのはみゆきだけでなく、ロボット歩きの亜希子もまた、良一と共に歩いて日々を過ごしていた。ゆっくり歩いているからこそ見つけられる、子供の背丈だからこそ見つけられる奇跡も多かったのかもしれない。
一方、第2章は亜希子もみゆきも自転車に乗っている。路地のシーンにおいて起こる様々な親子、あるいは男女の葛藤の傍には自転車がある。「うまく自転車乗れないブルース」から「ああ今日は遅刻だブルース」へ。
初回冒頭、ドラマは空から近づいていくように、自転車に乗るために奮闘しているみゆきを映す。それは次第に近づき、自動販売機の当たりに喜ぶ良一と初対面でいきなりアドバイスをし始める亜希子とみゆきの出会いを描く。そして、1章目の終盤、良一の死後、自転車の練習に励む亜希子とみゆきを映していたカメラは、空の上のパパに呼びかけるみゆきの視点を追うように、初回とは逆に地面から空を映す。「良一さん、見てますか~」と柔らかい表情で叫ぶ亜希子とともに。そして空は彼女たち2人を見つめ返す。
第2章の始まりはもう、豆粒みたいにちっぽけなみゆきではない。赤い自転車とカメラは併走する。
空の上にいる死者たち、写真と会話する役割は、良一から亜希子へと変わった。第7話で「どうしましょう~! 良一さん」と叫ぶ亜希子も、第6話で自転車に乗りながら何気なく空を見つめるみゆきの心の中にも、良一がいる。
温かい太陽の光に見守られながら、彼女たちが疾走する人生の物語は、どう築かれていくのか。
■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。
■放送情報
火曜ドラマ『義母と娘のブルース』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜23:07放送
出演:綾瀬はるか、上白石萌歌、佐藤健、井之脇海、竹野内豊、横溝菜帆、川村陽介、橋本真実、真凛、奥山佳恵、浅利陽介、浅野和之、麻生祐未
原作:『義母と娘のブルース』(ぶんか社刊)桜沢鈴
脚本:森下佳子
プロデュース:飯田和孝、大形美佑葵
演出:平川雄一朗、中前勇児
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/