伊藤沙莉、作品のトーンを変える役割に 『ひよっこ』『この世界の片隅に』に見る人物造形の豊かさ
現在放送中のTBS日曜劇場『この世界の片隅に』で、松坂桃李扮する北条周作の隣家に住む幼なじみ・刈谷幸子を演じている女優・伊藤沙莉。子役として9歳から活動を開始するなど15年のキャリアを持つ彼女だが、その演技力は各方面から絶賛されている。
太平洋戦争真っ只中の広島県・呉の人々の生活を描いた本作。どんな状況になっても、日常の大切さを誠実に切り取っていく作風は、多くの人々の心に染み入ってくるが、第6話のラストでは、ついに戦火が主人公のすず(松本穂香)たちにも襲い掛かるさまが描写された。
今後、物語はさらに緊張感を増し、よりシビアな展開になっていくことは容易に想像できる。そんななか、さらに存在感を増してきそうなのが、幸子だ。
幸子は、すずが嫁いだ呉の北条家の隣に住む女性で、松坂桃李演じる周作の幼なじみであり、恋心を抱く役柄。最初の登場から幸子は、すずに対して“分かりやすい敵対意識”を表しつつも、根っこの部分はとても優しく、すずにとって大いなる心の支えとなる女性だ。
日常を描くことがテーマでありつつも、戦時中というシビアな状況下、物語は一定の緊張感を保っている。そんななか、幸子は劇中、緩急の“緩い”雰囲気を一手に担う。本作の脚本を務めるのは、NHKの連続テレビ小説『ひよっこ』で脚本を担当した岡田惠和だが、『ひよっこ』で伊藤が演じた米屋の娘・安倍米子(通称:さおり)も、物語のペースを変える、異質な役割を果たした。