柴咲コウと橋本愛の切なく愛おしい愛の形 『dele』第5話は“生”を感じさせる回に
「今日1人はしんどい」
そう話す百合子が、自身の悲しみに共鳴する祐太郎と距離を縮め、聡史の思い出を楽しそうに語る姿は切ない。今時の若い女の子らしく笑顔を見せていたと思いきや、涙を浮かべ、それを打ち消すかのようにまた気丈に振る舞う。彼女の恋心が愛おしく苦しい。
一方で、明奈は1年に1度会う圭司に対して、こう語りかける。
「怖い? 2人になるの」
明奈からは圭司を慈しむような優しさが感じられる。「1人きりはしんどい」と話す百合子と「2人になるのが怖い?」と問いかける明奈。彼女たちの発した台詞と感情には違いがあるが、いずれも大切な人を想う愛が感じられる。はじめて圭司の職場を見た明奈は、長年抱えてきたであろう想いを口にする。「もし圭司が病気にならなかったら……」。2人の関係がうまくいっていたのか、それとも出会うことすらなかったのか。柴咲は穏やかな空気を漂わせながらも、圭司と明奈の間にあるもどかしい距離感を表現していた。彼らの間に“別れた恋人”の気まずさはない。ただ、圭司の病気がきっかけで距離が離れ、そのまま縮まることなく今に至っている様子は感じとれる。互いを想う心があるからこそ、距離を埋めることができない。しかし明奈は決心する。
「待ち合わせは今年で終わりにしよう」
圭司はその言葉に一瞬動揺したように見えたが、明奈の言葉には続きがある。「長くは待たないよ。私からデータ削除の依頼が来たらもう他人だと思って」。柴咲は、凛とした表情でこの台詞を発する。圭司の硬い表情も少し和らいだ。去り際の明奈の表情は清々しい。悪戯に微笑んだ明奈の表情は、今後の2人の進展を体現するかのようだ。圭司もまた、祐太郎に明奈との関係を問われた時、恋人ではないと否定しながらも「今のところは」と呟く。この2人が再び出会う機会は近いだろう。
聡史の親友・宮田翔を演じた渡辺大知の演技も見事だった。出番は少ないものの、バーで祐太郎に伝えた「楠瀬のためにも、データは削除したほうがいい」という台詞と、意識を取り戻した聡史と手を握り号泣する姿だけで、聡史への愛が伝わってくる。渡辺が登場する数シーンだけで、聡史と百合子と翔の間にあった愛の形が、視聴者の心へ流れ込んできた。その現場を間近で見ていた祐太郎は、依頼されていたデータが愛の証しではないかと推測。第5話ではじめて、削除依頼の取消が成立した。
今まで故人の人生を描いてきた『dele』だったが、意識不明のクライアントを介して、生きている今だからこそ伝えなければならないことを思い知らされた。それぞれの切なく愛おしい愛の形が描かれたからこそ、“生”を強く感じさせられる回だった。
また今回、百合子との会話の中で、祐太郎が9年前に14才の妹を亡くしていることが明かされた。回を追うごとに祐太郎の過去が少しずつ明かされていく。このことが今後の展開にどう関係していくのか。
■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。
■放送情報
金曜ナイトドラマ『dele(ディーリー)』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~深夜0:15放送(※一部地域を除く)
出演:山田孝之、菅田将暉、麻生久美子
原案・パイロット脚本:本多孝好
脚本:本多孝好、金城一紀、瀧本智行、青島武、渡辺雄介、徳永富彦
音楽: 岩崎太整、DJ MITSU THE BEATS
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)
監督:常廣丈太(テレビ朝日)、瀧本智行
撮影:今村圭佑、榊原直記
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:http://dele.life/