全てが過剰! アンディ・ラウ×ハーマン・ヤウ『ショックウェイブ』から感じる香港映画の意地

加藤よしきの『ショックウェイブ』評

 現在、香港は政治的に複雑な状況にある。香港返還から20年以上が経った。香港は今や中国の一部であり、「香港」というアイデンティティは揺らいでいる。もちろん映画業界とて無関係ではいられない。大陸市場でより大きな成功を収めた者もいれば、公然と中国政府を批判して干された者もいる。公開が中止になった映画だって一本や二本ではない。厳しい検閲は、日本の30歳以上くらいが何となく抱く「過剰かつ猥雑でエネルギッシュな娯楽活劇」=「香港映画」を減少させた。こうした現状の中、まさに80~90年代、そうした「香港映画」の看板を背負った者たちが、This is 香港映画な作品を作り上げたことが単純に痛快だ(ついでに言うと興行的に大成功しており、続編が動いているという)。

 少し話題が逸れてしまった。ともかく何もかもが過剰な映画なので、本作は大きな画面、そして映画に集中できる映画館で観るのがベストだろう。大爆発に銃撃戦。急展開の雨あられに、炸裂する義侠心。号泣必至のクライマックスなど、見どころ盛りだくさんの傑作だ。アンディ・ラウという唯一無二のスーパースターの輝きと、ハーマン・ヤウという鬼才の手腕、そして「香港映画」の持つパワーを是非とも劇場で体感してほしい。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『SHOCK WAVE ショック ウェイブ 爆弾処理班』
シネマート新宿ほかにて公開中
出演:アンディ・ラウ、チアン・ウー、フィリップ・キョン、ソン・ジア
監督・脚本・撮影:ハーマン・ヤウ
製作:アンディ・ラウ
アクション監督:ディオン・ラム
提供:TBSサービス
配給:アーク・フィルムズ
2017年/中国=香港/118分/カラー/ステレオ/シネマスコープ
(c)2017 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED / INFINITUS ENTERTAINMENT LIMITED
公式サイト:http://shockwave-movie.jp/

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