村上虹郎の台詞に強いテーマを反映 『この世界の片隅に』が描く狂った戦争の中にある“普通”

『この世界の片隅に』村上虹郎の台詞が重い

 昭和19年の12月。呉の北條家に、すず(松本穂香)の幼なじみで海兵団に入隊した水原(村上虹郎)が“入湯上陸”として訪ねてくる。アニメ映画版でもとくに人気の高いこのエピソードがひとつの軸として描かれ、戦争の足音が着々と大きくなりはじめてきた8月12日放送のTBS系列日曜劇場『この世界の片隅に』の第5話。

 「ここに泊めるわけにはいかない」と、納屋の2階に水原の寝床を用意した周作(松坂桃李)は、「もう会えんかもしれん」とすずにアンカを持たせて2人きりにさせる。すずを外に出して玄関の鍵を締めるところや、1人部屋でなかなか寝付けないでいる周作の表情を映していたりと、この一連のシークエンスに原作やアニメ映画版とはどこか異なるニュアンスを感じ取ることができよう。

 とりわけ納屋の2階でのすずと水原のやり取りで発せられる「あの人が腹立たしい」という言葉の持つ意味が、より複雑なものとして映る。それは周作がすずの前に結婚を考えていたリンの存在に、すずが悩んでいる様が描かれてきたからに他ならない。兄の遺骨のくだりののち、呉に帰る汽車の中での2人の喧嘩シーンでも、すずは周作から「言いたいことあるんか?」と訊ねられるまで言い出せなかったこととも重なる。

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