民放ドラマは今、若手俳優を育てている? 松本穂香ら7月クールドラマ主演女優陣から考察
近年の連続ドラマをみていると、朝ドラ(NHKの連続テレビ小説)で主演、もしくは脇役で目立った女優が主役を務めるケースが増えているが、この夏クールのドラマは特に多い。
『サバイバル・ウェディング』(日本テレビ系)の波瑠は『あさが来た』、『チア☆ダン』(TBS系)の土屋太鳳は『まれ』で朝ドラヒロインを演じている。脇役では『健康で文化的な最低限度の生活』(カンテレ・フジテレビ系)の吉岡里帆と『透明なゆりかご』(NHK)の清原果耶は『あさが来た』に脇役で出演。『恋のツキ』(テレビ東京系)の徳永えりは『梅ちゃん先生』、『あまちゃん』、『わろてんか』に出演している。
大規模なオーディションで選抜された後に、半年間同じ役を演じる朝ドラは、若手女優にとっては登竜門的な場所で、国民的認知度と演技力において朝ドラ出身の女優がドラマで起用しやすいというのは当然のことだろう。
それを踏まえた上でかなり戦略的にキャスティングしているのが『この世界の片隅に』(TBS系)だ。主演の松本穂香はオーディションで選ばれたが、彼女自身は昨年『ひよっこ』に脇役として出演し、鮮烈な印象を残している。
彼女と対峙する義理の姉に『カーネーション』の尾野真千子、隣りで暮らす女性を『ひよっこ』の伊藤沙莉。現代パートに登場する榮倉奈々も『瞳』で朝ドラヒロインを演じており、脇役までふくめるとかなり朝ドラ出演者が多い。
脚本を担当しているのが『ちゅらさん』、『おひさま』、『ひよっこ』の岡田惠和ということもあってか、ドラマの空気も朝ドラ的で、スーパー朝ドラ大戦、もしくは朝ドラ版アベンジャーズと言いたくなる。
『義母と娘のブルース』(TBS系)に出演している綾瀬はるかは朝ドラ出演はないが、大河ドラマ『八重の桜』で主演を務めている。そう考えると、今のドラマキャスティングの大半は朝ドラと大河ドラマを中心に回っていると言っても過言ではなく、今の民放ドラマの配役はNHKにかなり引っ張られていると言える。
もっとも、朝ドラに出演したからといって十把一絡げに朝ドラ女優と呼ぶことには違和感がある。例えば、『高嶺の花』(日本テレビ系)に出演している石原さとみ。彼女が今のイメージを確立したのは『てるてる家族』以降、20代に入ってからであるため、朝ドラとの関連で語ると現状とズレてしまう。同作に出演する芳根京子もオーディションで主演を務めた『表参道高校合唱部!』(TBS系)のイメージが強く、『べっぴんさん』に出演する頃には、すでに女優として評価が高かった。これは吉岡里帆や伊藤沙莉に対しても同じことが言える。