第3話でもクレジットは継続 ドラマ『この世界の片隅に』“Special thanks問題”を考える

『この世界~』“Special thanks問題”

 もっとも、その話題が出た直後でもある今回の第3話にも、継続して同様のクレジットが表記されていたことから考えるに、何らかの法的問題が生じる事態が起きているとも考えにくい。これまでの第1話・第2話を見ても、アニメ映画版へのリスペクトを込めて、原作漫画を実写のテレビドラマというメディアに移し変えてできるメリットを最大限に活かしていることはいうまでもない。

 だとしたら尚更に、アニメ映画版の公式Twitterが何故そのような声明を発表したのかは気になるところだ。その一因として考えられるのは、26日の午前に情報解禁された、約30分の追加シーンを加えた別バージョン『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が12月から公開されるというアナウンスだ。その中には、今回の第3話で出会いのシークエンスが描き出されこのドラマ版で重要な役割を果たすリンとすずとのエピソードが、新たに追加されていることが主要なトピックとして紹介されている。

 また、1年以上のロングランを記録している作品といえども、単純にメディアそのものの比較としてテレビと映画では認知度に大きな差が生じていることも否めないだけに、このタイミングでの再公開のニュースが、ドラマ版ありきだと考える人が出てこないとも言い切れない。しかし、クラウドファンディングで制作費をつのり、右肩上がりに興収を伸ばし、ひいては歴史的ロングランと海外での高評価を獲得した映画版は、支援してくれたファンの力があったからこそ再公開することができたわけだ。

 その「ファンの力」を無下にしないための、半ば決別とも取れるアナウンスが、アニメ映画版公式の決断であるとするならば尚更に、同じこうの史代の漫画を原作にし、同じマインドを持った作品であるドラマ版を、あえて否定的に捉える必要はないのではないだろうか。メディアの違いはあれど、どちらにも優れた部分がある。何よりも、諍いごとは『この世界の片隅に』にはふさわしくないだけに、何らかの追加声明がファンの元に届けられ、穏便に事態が収束することを願うばかりだ。

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■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
日曜劇場『この世界の片隅に』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社刊、『漫画アクション』連載)
脚本:岡田惠和
音楽:久石譲
演出:土井裕泰ほか
プロデュース:佐野亜裕美
出演:松本穂香、松坂桃李、村上虹郎、伊藤沙莉、土村芳、ドロンズ石本、久保田紗友、新井美羽、稲垣来泉、二階堂ふみ、榮倉奈々、古舘祐太郎、尾野真千子、木野花、塩見三省、田口トモロヲ、仙道敦子、伊藤蘭、宮本信子
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/konoseka_tbs/

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