患者の“たった1人の医師”となった上野樹里 『グッド・ドクター』“救えなかった命”が伝えるもの

『グッド・ドクター』上野樹里の思い

 はたから見れば、普段通りに仕事に打ち込んでいた夏美。ソラマメの絵本を読んだ舞から、「手術を受ける」という知らせを受ける。「手術は、夏美先生がしてね」と舞から直接告げられると、夏美は少し驚きながらも嬉しい表情を見せるが、「夏美先生なら怖くない。手術も絶対うまくいくでしょ?」という言葉に、美結を救えなかったときの思いが蘇ってくる。

 「瀬戸先生はどうしていつも通りに仕事ができるんですか。僕は悲しいです」。いつものように、湊からどストレートな質問が飛んでくる。しかし、この問いは、夏美が自分自身に問いかけているものでもあった。「医者が悲しんだところで、美結ちゃんは帰ってこない」。一度はそう答える夏美だったが、「私はあの子に何もしてあげられなかった」と話し始める。「瀬戸先生は救おうとしました」という湊に「助けなきゃ意味がないの。ごめん、あなたにも辛い思いをさせて」と伝える夏美。その言葉からは、周りには見せないだけで、心の奥底に抱え込んでいる深い悲しみが感じられた。

 美結への思いからとった湊の行動により、英雄と詩織は「少しだけ救われた」と言い、夏美を責めることで美結を失った悲しみを埋めるしかなかったと謝罪をする。「あのとき、美結にとってのお医者さんは、瀬戸先生、あなただけでした」。夏美は涙を流し、そして、その言葉に後押しされるかのように、舞の手術を執刀することを決意した。

 病院内で長く担当している患者や、急患で運ばれてきた患者、そこに違いはなく、一人ひとりの小さな命と大切に向き合ってきた夏美。湊という存在もまた、夏美を自らの本心と向き合わせてくれる人物と言える。今後、2人が医師としてどういった姿勢で患者と寄り添っていくのか、引き続き注目したい。

(文=大和田茉椰)

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

■放送情報
『グッド・ドクター』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00放送
出演:山崎賢人、上野樹里、藤木直人、戸次重幸、中村ゆり、浜野謙太、板尾創路、柄本明 他
原作:『グッド・ドクター』(c)KBS(脚本:パク・ジェボム)
脚本:徳永友一、大北はるか
プロデュース: 藤野良太、金城綾香
協力プロデュース:西坂瑞城
演出: 金井紘、相沢秀幸
制作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/gooddoctor/

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