井之脇海、池田エライザ、寛一郎、旬の若手俳優が集結! 『青と僕』のスリリングな緊張感

旬の若手俳優が集結した『青と僕』の魅力

 瑞々しい高校時代と、どこか陰のある現在。そのあいだにあるのは、「あいつ」の死だった。それを境として、次第に疎遠となった「ぼく」と「紫織」が、5年経った今、一通の不審なメールをきっかけに、再び正面から向き合おうとする「あいつ」の死。けれども、お互いの記憶のなかにある、「あいつ」の印象は、どこか微妙にずれているのだった。

 高校時代は無二の親友と思っていた「あいつ」のことを、「ぼく」は果たして、どこまで本当に理解していたのだろうか。「あいつ」が死の直前、「ぼく」に見せようとしていたものとは何だったのか。日々の生活のなかで、いつしか記憶に蓋をするようになっていた青春時代の光と影が、ある種の懐かしさと激しい痛みとともに、「ぼく」の胸の内によみがえる。

 3人が無邪気に夢を語り合っていた高校時代と、突然訪れた「あいつ」の死、そして次第に疎遠になっていった現在という3つの時間軸を行き来しながら進んでゆく物語。「あいつ」は、なぜ死んだのか。そして、「ぼく」に不審なメールを送った人物は、果たして誰なのか。重層的に練り込まれた本作の脚本を担当するのは、『ぼくは麻理のなか』と同じく若手脚本家の下田悠子。その脚本監修として、岸田國士戯曲賞を受賞した、劇団ままごとの柴幸男がクレジットされているのも見逃せない事実だろう。さらに、その音楽を担当しているのは、意外にも今回が初の連続ドラマの劇伴起用となる牛尾憲輔(agraph)だ。

 それだけでも、「若手キャストとスタッフで、新しい形のドラマを生み出そう」という気概が窺える本作だが、個人的に何よりも注目したいのは、本作のチーフ監督を、サカナクションや水曜日のカンパネラ、Charaなどのミュージックビデオで知られる山田智和が務めていることだった。美しい映像表現であることはもちろん、そこにエモーショナルな躍動を刻み込むことのできる映像作家として、ミュージックビデオやCMの世界では、若手最注目の存在である山田。2016年には、二階堂ふみとコムアイが渋谷の街を駆け巡る、実験的なワンカット・ドラマ『トーキョー・ミッドナイト・ラン』(フジテレビ)を手掛けるなど、ミュージックビデオやCMだけではない映像表現にチャレンジし続けている彼にとって本作は、初めての連続ドラマ演出となる。さらに、そのサポートには、『ぼくは麻理のなか』を演出した、同じくミュージックビデオ出身の監督、スミスも名を連ねている。

 美しさのなかに、どこかスリリングな緊張感と、刹那のエモーションを秘めた映像によって切り取られる若者たちの群像劇。そこに、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』、そしてドラマ『女性的生活』(NHK)などで強い印象を残していた中島広稀、ドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)の“マロ”役として好印象を残し、映画『わたしに××しない!』のメインキャストにも抜擢されるなど、近年その存在感を増している金子大地といった若手俳優たちが加わりながら、さらなる謎と奥行きを増している物語は、早くも折り返し地点を迎えようとしている。

 「澄み渡る青、混じり合い群青。3人がどこまでも青く美しかったお話と、3人がどこまでも不器用で下手くそだったお話。10数年の時を行き来しながら紐解かれていく“とある事件”を、是非目撃して下さい」とは、池田エライザのコメントだ。それにしても、『青と僕』という一風変わったタイトルが示す「青」とは、果たして何なのだろうか。抜けるような空の青さと、吸い込まれる海のような青さを行き来しながら描き出される「青春の光と影」。物語の最後、彼らはそれを、どのように抱きしめようとするのだろうか。決して爽やかなだけはない「青き」日々の内実を、しかと見届けたい。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「リアルサウンド」「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。Twtter

■放送情報
『青と僕』
フジテレビ系にて、毎週月曜24:55〜25:25放送
出演:井之脇海、寛一郎、池田エライザ、中島広稀、金子大地、八十田勇一、マキタスポーツ、霧島れいか
脚本:下田悠子
脚本監修:柴幸男(劇団ままごと)
企画:加藤達也/村上正成(フジテレビ)
監督:山田智和、吉田卓功、スミス
音楽:牛尾憲輔
アート協力:wataboku
プロデュース:櫻井雄一(ソケット)
(c)フジテレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/aotoboku/index.html

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