『この世界の片隅に』が図る“映画版との差別化” 「さようなら広島」の台詞をカットした狙いは?
とはいっても、映画版の製作委員会の名前が「Special Thanks」としてスタッフクレジットに登場していることからもわかる通り、同じ原作を用いたリメイク作品としてではなく、きちんとアニメと実写、映画と連続ドラマ、それぞれの利点を生かしながら、並列の関係を保ちつつ差別化を図ろうとしていることを踏まえると、これもひとつの正解なのだろうと納得せずにはいられない。
ましてや「戦争」の影は、この物語では絶対に避けては通れないものである。第1話に続いて産業奨励館がしっかりと鎮座している姿が登場する点であったり、すずが第1話でキャラメルを買った駄菓子屋を訪れて再びキャラメルを買うシーンでは、すっかり置かれている商品が少なくなっていたりと、刻一刻と戦火が近付いていることがにおわされる。それに加えて「戦艦大和」の登場もしかりだ。次週では水原(村上虹郎)をはじめとした、他の登場人物たちの物語も描かれ、一気にストーリーが進みそうな予感がするだけに、その描写の仕方に注目しておきたい。
■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■放送情報
日曜劇場『この世界の片隅に』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社刊、『漫画アクション』連載)
脚本:岡田惠和
音楽:久石譲
演出:土井裕泰ほか
プロデュース:佐野亜裕美
出演:松本穂香、松坂桃李、村上虹郎、伊藤沙莉、土村芳、ドロンズ石本、久保田紗友、新井美羽、稲垣来泉、二階堂ふみ、榮倉奈々、古舘祐太郎、尾野真千子、木野花、塩見三省、田口トモロヲ、仙道敦子、伊藤蘭、宮本信子
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/konoseka_tbs/