劇場版ポケモン『みんなの物語』が描く“ポケモンと人間の関係” 来年のミュウツーが問い直す流れに?

『みんなの物語』が描くポケモンと人間の関係

 そこで気になるのは、来年の動向だ。通例通り『みんなの物語』のラストにはつけられた特報では、次作はなんと『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』(正式タイトルは変わる可能性もあるだろう)だという。タイトルと映像から考えるに劇場版第1作『ミュウツーの逆襲』を踏まえた作品になる可能性は高いだろう。

 『ミュウツーの逆襲』はクローンで生まれたミュウツーが、人間とポケモンの関係を問い直す“敵”として現れる。これは『ポケモン』シリーズの基礎を構築した脚本家、首藤剛志が、シリーズを通じてのテーマを「人間とポケモンの関係」と考えていたことと深い関係がある(これについてはWEBアニメスタイルで首藤が連載した「シナリオえーだば創作術」に詳しい)。

 ここで思い出すのは、『みんなの物語』の中に「人間がポケモンを思うように、ポケモンも人間を思ってくれているとうれしいな」というようなセリフが出てくるということだ。ミュウツーは、このような人間の甘い思いにノーを突きつける存在だからだ。

 これはどういうことか。『キミにきめた!』『みんなの物語』、そして『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』は3部作として構想されているのではないか。

 まずサトシとピカチュウを通じて、ポケモンと人間が友達であることの素晴らしさを描く。そしてそれはサトシだけのことではなく、さまざまな人、ひいては街という「社会」にとってもそうであることを示す。そして、そうして積み上げてきた「人間とポケモン」の関係を、次作でミュウツーが問い直すのではないか。

 この要素は何か具体的な根拠のあるものではない。しかし、そう考えたくなるだけの要素は『キミきめた!』『みんなの物語』の中で十分に描かれている。来年のポケモン映画がどのような内容になるか、その点も非常に注目といえる。

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■藤津亮太
1968年生まれ。アニメ評論家。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)、『声優語』(一迅社)がある。アニメ!アニメ!にて アニメ時評「アニメの門V」を連載中。Twitter

■公開情報
『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』
全国東宝系にて公開中
声の出演:芦田愛菜、川栄李奈、濱田岳、大倉孝二、野沢雅子、中川翔子、山寺宏一、
松本梨香、大谷育江、林原めぐみ、三木眞一郎、犬山イヌコ、石塚運昇
原案:田尻 智  
監督:矢嶋哲生  
アニメーションスーパーバイザー:湯山邦彦
エグゼクティブプロデューサー:岡本順哉、片上秀長
プロデューサー:下平聡士、松山進、知久敦、大日向俊
脚本:梅原英司、高羽彩  
アニメーションプロデューサー:加藤浩幸、和田丈嗣
キャラクターデザイン:金子志津枝  
総作画監督:西谷泰史、丸藤広貴
音響監督:三間雅文  
音楽:宮崎慎二 
アニメーション制作:OLM / WIT STUDIO
製作:ピカチュウプロジェクト  
配給:東宝
(c)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(c)Pokemon (c)2018 ピカチュウプロジェクト
公式サイト:http://www.pokemon-movie.jp/

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