劇場版ポケモン『みんなの物語』が描く“ポケモンと人間の関係” 来年のミュウツーが問い直す流れに?
昨年公開された『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』はTVシリーズの序盤をベースに、サトシとピカチュウの絆ができるまでを描いた。それによって『ポケモン』の原点を見つめ直す作品だった。
そして、現在公開中の『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』は、そこを踏まえた上で、老若男女がポケモンとともにそれぞれの課題を乗り越えていく姿を描いた。そこではサトシとピカチュウは、理想的な関係を築いている一種の“象徴”であり、ドラマはサブタイトルの通り「みんなの物語」として出来上がっている。
舞台は、人々が風と共に暮らす街・フウラシティ。フウラシティでは年に1回の風祭りが始まろうとしていた。昔から、祭りの最終日にはルギアが現れ、人々はルギアから恵みの風をもらうという“約束”が続いていた。
このようにポケモンと人間の共存を体現したような街・フラウシティだが、そこには公に語られることのない暗部もあった。50年前発生した山火事。それが原因で、あるポケモンとの関係が壊れてしまったのだ。登場人物も、フラウシティ同様、“問題”や“秘密”を抱えた人物ばかりだ。
怪我が原因で走ることが怖くなってしまった女子高生・リサ。いいかっこをしたくてホラばかり吹いてしまう男・カガチ。優秀な研究者だが他人とのコミュニケーションが苦手な青年・トリト。理由があってポケモンを遠ざける老婆・ヒスイ。そして父である市長に隠し事をして、火事以来立入禁止の山に足を運ぶ少女・ラルゴ。
登場人物たちは風祭りの賑わいの中、ポケモンやさまざまなキャラクターと触れ合い、そしてそれぞれの“問題”と対峙していく。たとえばカガチは、ポケモン・ウソッキーに一方的に慕われることになる。ウソッキーは木のような姿に擬態した、いわタイプのポケモン。カガチは最初、ウソッキーを嫌っているが、やがてその理由は自分にあると気づく。そして自分のついたウソの責任を果たそうとする。
物語の中盤で、それぞれのキャラクターが、自分の抱えた問題故に挫折し、クライマックスの中で、行動を通じて問題を乗り越えていく。そこにはドラマチックなカタルシスがある。その時に、彼らの側にいるのがポケモンであり、彼らはポケモン・パワーのおかげで行動を起こすことができるのだ。
劇場版第2作『ルギア爆誕』以来のルギア登場ということもあるのだろうが、筆者が足を運んだ劇場では、子連れでない大人のお客も多かった。報道によると、最初の週末の興行成績は興収5億円。最終興収35.5億円だった前作に準じるスタートなので、昨年からの路線変更は成功したと見てよいだろう。