セクシュアル・マイノリティがテーマの映画はどう変遷した? レインボー・リール東京担当者に聞く
「年を追う毎にテーマが多様化している」
ーー逆に、映画祭で扱っている作品を観て、この27年で作品内におけるセクシュアル・マイノリティの描かれ方などにはどのような変化が見られますか?
村井:昔はやはり、ストレートな恋愛モノや、親などへのカミングアウトなどが作品のテーマとして多かったように思いますが、年を追う毎に、そのテーマが多様化していますね。今年は、セクシュアリティをとりまく家族や周囲との人間関係、伝統文化との軋轢といった様々な要素の絡むテーマを扱った、現在の世相を反映した作品を上映していきます。
ーー今年のラインナップの中での注目作とその見どころを教えてください。
村井:今年、絶対見逃せないのが、ベルリン国際映画祭や、サンダンス映画祭など世界中の映画祭で上映され、数々の賞を受賞した2017年のベストゲイ映画『ゴッズ・オウン・カントリー』ですね。前売券が即日完売してしまったほど話題になっているのですが、当日券もご用意していますので、是非ご覧いただきたいです。また、2016年の釜山国際映画祭に出品されたのち、今年2月に韓国で劇場公開された、『移ろう季節の中で』は、数多くの韓国ドラマに出演しているベテラン女優ペ・ジョンオクと、モデル出身の端正なルックスで人気上昇中の若手俳優イ・ウォングンが主演を務めているのですが、季節の移ろいとともに変化する感情を表現した、2人の繊細な演技に注目してほしいです。それから、第90回アカデミー賞外国語映画部門・南アフリカ代表作品にも選ばれた『傷』は、タブーとなっている儀式を描いたことで伝統主義者の反発を呼び、南アフリカのメインストリームの映画館で上映中止に追い込まれた問題作でもあるので、是非この機会に。そのほか、2016年サンセバスチャン国際映画祭最優秀新人監督賞を受賞するなど、世界中の映画祭で上映され話題を集めた『テルアビブの女たち』、アメリカ各紙の2017年LGBT映画ベスト10にランクインした『プリンセス・シド』、ACT UPメンバーとして精力的に活動し、エイズ禍の時代を生き抜いたアーティストの姿を、『チョコレートドーナツ』のアラン・カミング主演で描いた『アフター・ルイ』、生まれた時から耳が聞こえないろう者の今井ミカ監督が、ろう者のキャストやスタッフたちとともに作り上げた、若者たちの成長物語『虹色の朝が来るまで』、家族にも言えない大きな悩みを抱え込む女子高生をめぐり、障害や、偏見と差別、家族との絆を問う舞台の記録映画『イッショウガイ』なども注目です。洋画のすべての作品が、日本での配給が付いていない作品ばかりなので、これを逃すとスクリーンやBlu-ray・DVDでは観られないものばかりです。皆様のご来場を心よりお待ちしています。
(取材・文=宮川翔)
■イベント情報
「第27回レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~」
7月7日(土)〜8日(日)東京ウィメンズプラザホールにて開催
7月13日(金)〜16日(月・祝)スパイラルホール(スパイラル 3F)にて開催
主催:レインボー・リール東京運営委員会、NPO法人レインボー・リール東京
公式サイト:http://rainbowreeltokyo.com/2018/